絵本『ウォーリーをさがせ!』が1987年11月末の発売から35周年を迎えました。
現在でもCMやポスターなどで見かけることも多い『ウォーリーをさがせ!』について、絵本を日本で発売することになったところからブームになるまでの秘話や、最新作をご紹介していきます。
さて、前編では、絵本『ウォーリーをさがせ!』の登場人物のおさらいや、株式会社フレーベル館での出版が決まるまでの秘話を紹介してきました。
いよいよ出版となり、クリスマス商戦での販売を決めたものの、価格や判型による問題点を抱えていた当時のフレーベル館編集部の熊谷氏。
どのように解決してブームにしていくのでしょうか?
また、『WHERE’S WALLY?』の日本語タイトルはどのように考えたのでしょうか?
絵本『ウォーリーをさがせ!』ここだけの話-続き-
大型本のため、書店の棚の高い位置に置かれてしまうことや、初版で売れないと返品されてしまい、ロングセラーにならないことなどの問題を解決するために熊谷氏が取った行動は、「愚直な活動」でした。
※フレーベル館100年史『「ウォーリー」、君に出会えてよかった!』(筆者/熊谷弘司:当時のフレーベル館編集部)から抜粋・参考
クリスマス商戦の書店での平積み
初版が勝負の時代において、書店で平積みされることは大きなメリットとなります。
特にクリスマス商戦の時は、書店内の一等地を各出版社が取り合うのです。
そのためにも、書店に売れそうだと判断してもらう必要があります。
このことから、フレーベル館の出版営業員たちは書店に対するPRを事前に徹底して行い、その結果、全国120書店での平積みを確保することに成功したのです。
これがブームの礎となったと熊谷氏は社史に記しています。
日本語タイトルはどのように考えた?
多くの人に目をとめてもらうための日本語タイトルを考えなければいけません。
原題が『WHERE’S WALLY?』であり、“ウォーリーはどこにいるの”とするのが普通かと思います。
しかし、もっとインパクトの強いものにしたいということで『ウォーリーをさがせ!』というタイトルに決まりました。
また、当時としては同類の本がほとんどなかったため、購買者が何の本なのかすぐに分かるように「261回は楽しめるウォーリー追跡パズル絵本」という帯をつけて、他の本と差別化したそうです。
現在、多くの出版社から「〇〇をさがせ!」という本が出ていますが、その元になったのは『ウォーリーをさがせ!』だということは明らかかと思います。
それぐらい、秀逸なタイトルだったということでしょう。
各国の『ウォーリーをさがせ!』
日本語版タイトルでは『ウォーリーをさがせ!』となりましたが、各国ではどのようなタイトルになっているのでしょうか?
ちなみに、各国では『WHERE’S WALLY?』のWHERE’Sは各国の言語に変換されているものの、「どこ」という意味は踏襲されており、WALLYという名前が変換されています。
・アメリカやカナダ(英語):ウォルド
・中国語:ウィリー
・フランス語:シャルリ
・ドイツ語:ウォルター
・ノルウェー語:ウィリー
・ベトナム語:ヴァンラング
・スウェーデン語:ヒューゴ
・アラビア語:アレフ
・ヘブライ語:エフィ
・ヒンディー語:ヘティ
・トルコ語:アリ
このように、その国らしい人の名前となっています。
絵本から飛び出したウォーリー、そして……
様々な課題を乗り越えた絵本『ウォーリーをさがせ!』は、1987年11月末、いよいよ書店に並びました。
クリスマス時期での平積みが奏功し、すぐに重版となり、その後も重版を繰り返し、1万部単位の増刷となるのはあっというまだったそうです。
この時熊谷氏は、ロングセラーになるかもしれないという予感を持ち始めたとのことです。
そして、1988年6月『タイムトラベラー ウォーリーをおえ!』、1989年11月『ウォーリーのふしぎなたび』を出版。
タイトルが増える度に「ウォーリー」は人気となり、幼児から大人までが手に取る超ベストセラーとなっていきました。
そして、それを後押ししたのが、複数社によるウォーリーのCM起用です。
さらにはウォーリー関連グッズ市場が作られ、ライセンシーの数はなんと50社で100憶円市場にまで拡大したようです。
グッズとしては、ジグソーパズルやレターセット、バッグ、貯金箱などが作られ、幼児だけでなく、女子高生や大人の女性にまで人気が拡大していったのです。
これに拍車をかけたのは各メディアです。
各メディアは「若い女性に大人気」という謳い文句でウォーリーを取り上げました。
フレーベル館からすると何億円もかかる宣伝を無料でしてもらったようなものです。
現在では、「ウォーリーをさがせ!」シリーズは大型絵本7タイトルがそろい、シリーズ累計発行部数は1,149万部(2022年1月末時点)となっています。
36年前の「他社には見せたくない」から始まったウォーリーシリーズは今もなお、ロングセラー商品として生き続けています。
作者:マーティン ハンドフォードはどんな人?
作者であるマーティン・ハンドフォード(Martin Handford)氏は1956年、ロンドン北部のハムステッドで生まれました。
幼い頃から絵を描くのが好きだったそうですが、たくさんの映画を観たり、兵隊のおもちゃで遊んだりしていたことに影響され、たくさんの人物がからむアクションシーンを描くことをひらめいたそうです。
ハンドフォード氏は「群衆の動きとエネルギーが大好き」と語っており、人々の活気や動きなどから創造性を働かせているとのことです。
イギリス・ケント州のメードストン美術大学を卒業したハンドフォード氏は、イラストレーターとして数々の展覧会に入賞し、国内やヨーロッパにおいてもその才能を認められています。
ウォーリーの仮装やギネス世界記録
最近では、ハロウィンイベントとして仮装することがはやっています。
そんなハロウィンイベントでウォーリーの仮装をする人もおり、未だに『ウォーリーをさがせ!』が世界中で人気であることを物語っています。
また、2017年には長崎のハウステンボスにウォーリーの仮装をした人が集まってギネス世界記録に挑戦しました。
記録タイトルは「ウォーリーの仮装で集合する最多人数|Largest gathering of people dressed as Wally/Waldo」です。
こちらは、3度目の挑戦で4,626人が集まり、見事ギネス世界記録となりました。
2023年9月発売の気になる最新作
ここまで『ウォーリーをさがせ!』が日本でヒットするまでをご紹介してきました。
そして、まだまだ進化を続けている『ウォーリーをさがせ!』から新刊が出ました!
早速、ご紹介させていただきます。
ウォーリーをさがせ! ア・メイズ・イング めいろのたび
2023年9月に発売された最新刊はいつものウォーリーさがしに迷路が追加されています。
ウォーリーとなかまたちをさがすので精一杯なのに、迷路まで攻略しなければならないため、難易度が高くなっています。
「迷路なんて別に簡単じゃない?」と思った方もいるかと思います。
しかし、この迷路がやっかいで、いろいろなタイプがあり、さらにはクリアするための「めんどうくさい」条件まであるというものです。
筆者も試しに2つほどやってみましたが、頭が爆発しそうになりました。
せっかくなので、一部をご紹介しますね。
「くうこう」での場面、たくさんの旅行かばんが並び迷路になっています。
この場面の迷路自体はさほど難しくないです。
しかし、この中から迷子の乗務員や仲間がどこかにおいたかばんを探さなくてはならないのです。
もちろんこのページでもウォーリーたちをさがす必要があります。
また、巻末にはいつものようにチェックリストがあり、それらもさがさなくてはなりません。
各ページの迷路は全く違うタイプかつとても難しい作りになっています。
全部クリアできる人はいるのでしょうか?
ぜひ、一人でも家族、友達、はたまた学校や会社をあげて挑戦してみて欲しいです。
■Amazonで購入する
■楽天ブックスで購入する
これまでの『ウォーリーをさがせ!』シリーズ
NEWウォーリーをさがせ!
ウォーリーが生まれた1冊! 世界を旅するウォーリーが、いろんな場面に姿を見せるよ。はじめてウォーリーをさがすなら、ここからはじめよう!
NEWタイムトラベラー ウォーリーをおえ!
本にのめりこんだウォーリーは、時空を超えた場面に迷いこむ。古代エジプトや日本の戦国時代、はては未来まで登場!
NEWウォーリーの ふしぎなたび
こんなにもふしぎなくにがあるんだな。ウォーリーはまほうつかいしろひげを追い、まきものを拾いながらわたりあるく!
NEWウォーリー ハリウッドへいく
いよいよスーパースターの仲間入り? ハリウッドにウォーリーがおり立つ。スターもスタッフのエキストラもごちゃまぜだ!
NEWウォーリーの ゆめのくに だいぼうけん!
自由に出入りできる本の世界でぼうけんだ! とびきり楽しいゆめのくにで、ウォーリーといっしょに大さわぎ!
NEWウォーリーをさがせ! きえた名画 だいそうさく!
見つけた絵のモデルを見つけたら額ぶちシールをはろう。左右の絵を比べたまちがいさがしや、シルエットあてクイズもあるよ。
NEWウォーリーをさがせ! 謎のメモ 大追跡!
さがし絵だけでなく、めいろやすごろくまでついているゲームブックだ! ペーパークラフトのような付録あり!
35周年記念プレゼントキャンペーン
2023年10月2日~11月5日で今回ご紹介した最新刊を含む、「ウォーリーをさがせ!」の書籍が当たるキャンペーンを実施しています。
ぜひ、ご応募ください!
まとめ
35周年を迎えた絵本『ウォーリーをさがせ!』。 日本の翻訳権を持っているフレーベル館の「100年史」に残されていた記録により、ブームになるまでの経緯が明らかになりました。 今もなお衰えることのない人気で活躍する「ウォーリー」のこれからの旅にもぜひ、注目してみてください。 文/けっとばーど 監修/株式会社フレーベル館編集部 監修/WALKER BOOKS