【今週のサンモニ】厚顔無恥な暴走は止まらない|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。過去の番組の論調を忘れたかのような厚顔無恥なコメントを連発。

しれっと完全な誤報を

2023年10月1日放映の『サンデーモーニング』は、これといった世間を騒がせたネタもなく、一週間に起きた小さなニュースを次々とコメント付きで報じました。気になったのは、過去の番組の論調などお構えなしの厚顔無恥の欺瞞でした。

関口宏氏:経済対策や減税を旗印に岸田総理が早期解散・総選挙に踏み切るのではないかという観測も広がっています。

松原耕二氏:補正予算について一言言っておきたい。補正予算というのは、前は3兆とか4兆の規模だった。ただ、コロナをきっかけに財政規律のタガがはずれた。去年、コロナが大分収束してきても28兆円も積んでいる。緊急でない本予算で入らなかったものを滑り込ませている実態がある。しかも国会で本予算ほど審議をきちんとしないで済む。与党にとっては物凄く便利なものになってしまっている。しかも選挙を睨んだバラマキになりはしないか。もう平時の補正予算に戻すべきだ。最近の内閣改造の在り様を見ても、解散の議論を見ても、借金の減らなさを見ても、本当に日本は変われないというけれども、最も変われないのは政治ではないか。

関口宏氏:借金として残っていくわけだから、もっと若い人が怒らなければいけないな。

松原氏の主張するように、政府が有権者の投票を目当てにした不必要な補正予算を編成しないよう厳しくチェックすることは、メディアの重要な役割です。

しかしながら、松原氏がその前提として「去年(2022年)、コロナが大分収束してきても」と言明したのは完全な誤報です。

実際には、コロナが2022年に収束した事実はないばかりか、コロナの感染者数も死者数も超過死亡者数も2022年になって過去とは比べ物にならないくらい顕著に増大し、過去最大となりました。

コロナ対策費拠出の原因は他ならぬ「サンモニ」

2022年にコロナの被害が過去最大であったにもかかわらず、日本国民が「コロナが収束」した気になっているのは、東京五輪が終わった2021年下期からコロナ報道が顕著に減少したからです。なぜ2021年下期以降にコロナのテレビ報道が減少したのでしょうか。それはコロナ報道の視聴率が顕著に減少したからに他なりません。

コロナに関する報道量が減少した後、日本国民は、コロナが過去最大の被害を与えているにもかかわらず、コロナのリスクを許容し、2023年5月からは通常の生活に戻りました。このことが何を意味しているかと言えば、日本国民にとって、コロナのリスクは最初から許容可能なリスクであったということです。

この許容可能なリスクを2020~2021年に日本国民がなぜ許容できなかったかと言えば、『サンデーモーニング』をはじめとするテレビが、コロナの恐怖を過剰に煽って商売にしたからに他なりません。日本国民はパニックを発生し、コロナ感染に過剰な恐怖を抱きました。日本のコロナ禍はテレビが造った史上空前の風評被害なのです。

日本国民にとって許容可能な死亡リスクであったにもかかわらず、日本政府は2020~2021年に100兆円を遥かに超す莫大な血税をコロナ対策費として拠出するに至りました。

なぜかと言えば、『サンデーモーニング』をはじめとするテレビが、パニックを発生した国民を人質にして、日本政府をまるで人殺しのように悪魔化した上で、大規模なコロナ対策を急ぐようヒステリックに要求し続けたからです。過去最大の死者数を記録した2022年に政府が28兆円の補正予算を行ったことに対し、『サンデーモーニング』はとやかく言える立場にいません。

若い人が本当に怒らなければならない相手は、不必要にコロナの恐怖を煽って国に無駄遣いさせ、将来世代に莫大な借金を負わせた『サンデーモーニング』をはじめとするテレビ番組です。

テレビこそ、コロナで国民一人当たり100万円を超す借金を創出した元凶そのものです。松原氏の発言は過去に『サンデーモーニング』が行った大衆操作を完全に無視した掌返しに他なりません。

ちなみに『サンデーモーニング』は現在でもコロナをネタとした非科学的な報道を行っています。2023年9月17日の放送はその典型です。

数値を読めない非科学的な番組出演者

関口宏氏:一昨日発表された全国の感染状況によると一医療機関当たりの感染者数は20.19人で依然収束の見通しは立っていないように見えます。

荻上チキ氏:尾身氏が言っていた「ピークはまだ」は、まだまだたいしたことはないという意味ではなく、ピークアウトはまだ、つまり流行に向かっている最中であると。つまりこれからより警戒が必要であるという状況がある。

これはまったく非科学的な見立てに他なりません。このときに発表されていた週ごとの患者数(正確には一定時間あたりの患者数)の時間変動を見ると、7月下旬の段階で下に凸から上に凸に既に移行していることがわかります。

(2023年9月15日発表)

この変曲は、物理的には、患者数の発生速度の時間微分(導関数)である患者数の発生加速度が極値をとっている、つまり一定確率で患者を発生させる感染の実効再生産数がそのとき既にピークアウトしていることを意味しています。実効再生産数のピークアウトから1カ月以上経過している9月の上旬には、既に流行はピークを越している状況にあると考えるのが蓋然的です。

事実、その後に発表された患者数の変動を見れば、2023年9月15日発表の段階でも患者数は既にピークアウトしていることがわかります。

(2023年9月29日発表)

感染者数(流行)のピークアウトは少なくともその1週間以上前であったと推定されます。荻上氏が「流行に向かっている」と言明したのは完全な誤報です。

このように数値を読めない非科学的な番組出演者が公共の電波で高らかに誤報を流すという行為は、これまでに『サンデーモーニング』で繰り返し行われてきたことです。しかも番組は誤報の検証を一切行いません。本当に無責任極まりない迷惑な番組です。

中国の主張を復唱

こちらの報道も舌の根の乾かぬ内の無責任な報道です。

アナウンサー:中国と日本の間では処理水をめぐる対立が続いています。IAEA総会では…

中国国家原子力機構副主任(VTR):福島原発汚染水の海への放出は重大な安全問題である。厳しい国際的な監視が必要だ。

アナウンサー:放出を監視する国際的な枠組みを作るべきだと主張。これに対し日本側も…

高市早苗大臣(VTR):中国は不条理な輸入制限を課している唯一の国です。日本政府はIAEAの継続的な関与の下、最後の一滴まで安全性を確保する。

アナウンサー:5日からの2回目の海洋放出を控え、非難の応酬が続く日中。処理水をめぐって中国は、国際的な監視体制を作るよう求めるなど日本の立場とは相容れない主張が続いていて、そんな中でどのような思惑をもって首脳会談に臨むのでしょうか。

まるで他人事のように処理水放出をめぐる日中間の対立を報じる『サンデーモーニング』ですが、中国の主張は、『サンデーモーニング』がこれまでに公共の電波を使って垂れ流してきた非科学的な「汚染水放出デマ」と完全に一致します。

つまり中国は『サンデーモーニング』の主張を復唱しているだけなのです。風評加害者の『サンデーモーニング』は、過去の報道を検証する責任があると同時に、中国の禁輸による風評被害の責任をとる必要があります。

300億円と1000億円

さらに番組は、大阪万博をめぐって次のように報じました。

アナウンサー:大阪万博の会場建設費が450億円増えました。このお金の負担は、国と大阪と経済界が3等分するので、2/3が税金で賄われることになります。

三輪記子氏:やめるという選択肢を視野に入れなければいけない。

『サンデーモーニング』は、予測不可能なウクライナ戦争が引き起こした世界的なインフレによる大阪万博の会場建設費の増額を見込めなかったことを非難し、税金から300億円(=450億円×2/3)を支払うことを問題視しました。

しかしながら、よく考えてみましょう。

『サンデーモーニング』は、公共の電波を使って「汚染水放出デマ」を繰り返し拡散しました。こういったデマによる風評被害対策費には1000億円の血税が当てられています。予測不可能な事象による300億円の税負担増を問題視するなら、意図的なデマの流布による1000億円の税負担増を同時に問題視する必要があります。

ちなみに「汚染水デマ」による最大の風評被害者は、デマの罰ゲームを理不尽にさせられている日本国民に他なりません。厚顔無恥な番組の暴走は止まりません。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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