混乱を心配、様子見も 消費税のインボイス制度始まる、和歌山県南部の事業者

図・インボイス制度

 消費税のインボイス(適格請求書)制度が10月から始まる。商工関係者からは「周知はまだ十分ではない」と混乱を心配する声もある。様子見を決め込んでいたり、検討さえしていなかったりする事業者も少なくない。

 和歌山県田辺商工会議所では制度開始に向け、セミナーを開いてきた。当初インボイス登録の申請期限は2023年3月末で、22年度は6回開催。期限が9月30日までに見直され、23年度も5月と8月の2回開催した。それぞれ定員の30人を上回る参加があった。以降も相談に訪れる事業者があるという。

 最も影響を受けると見込まれるのが、売上高1千万円以下の小規模事業者。これまで納税が免除されていたが、導入後はインボイスを発行するため課税事業者として登録するかどうか、判断が迫られる。

 登録すれば売り上げに応じた税負担が求められる。登録しない場合は、取引先の税負担が増える仕組み。それを嫌い取引先が免税事業者に値下げを強要すれば独占禁止法などで問題になるが、関係者は「十分起こり得る」と警戒する。

 影響は免税事業者だけではない。会社員などが得意先との飲食やタクシーを利用する際に、インボイスを求められる可能性がある。課税事業者か免税事業者か確認作業が増え、経理の事務処理も負担が増す。

 ある商工関係者は「物価高騰、人手不足のこの時期になぜ新制度なのか。さまざまな負担が増えるのは間違いない。現行のサービスや価格に消費税を転嫁することによる値上げも出てくるだろう」と話した。

■10月2日以降の登録

 10月2日以降に登録を受ける場合、登録希望日の15日前までに申請する。例えば24年2月1日に登録を受けようとする場合は、1月17日までの申請が必要になる。

■メモ

 インボイスは、事業者間の取引で商品の売り手が消費税の適用税率や税額などを記載した請求書を買い手に発行する制度。インボイスがないと仕入れで支払った消費税を差し引くことが原則できず、買い手の負担になる。

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