実は両側で立ち止まった方が移動は早い? 「エスカレーターは歩かず立ち止まって」条例

エスカレーターには立ち止まって乗るよう義務付けた条例が1日、名古屋市で施行されました。街の人の思いを聞きました。

ことし2月、名古屋市内のエスカレーターを利用する人たちの様子です。

多くの人が左側に立ち止まっていましたが、空いた右側を歩いて利用する人もいました。

これが、長年の名古屋の常識でした。

ところが、1日からこの名古屋の常識は変わりました。

新たな条例が施行されたのです。

エスカレーターでの事故防止のため、利用するときには歩かずに立ち止まって乗ることが努力義務に…「罰則」はありません。

全国では2例目、政令指定都市では初となる条例です。

2日朝、通勤途中の方々に聞きました。

(60代の通勤男性)
「急いでいるときは止まって待つのが辛い」
(40代通勤男性)
「自分が(エスカレーターを)走って危ない思いをしたことがある」
(20代通勤女性)
「他の市も条例になると(立ち止まる)習慣がついてくると思う」

2日朝の金山駅では、河村たかし市長らが安全利用を呼びかけました。

(河村たかし・名古屋市長)
「歩かないで。立ち止まって」

また、このたび結成された「なごやか立ち止まり隊」が、エスカレーターの模範的な乗り方を実践、右側に立って背中で思いを語りました。

メンバーは、今月15日まで市内の地下鉄の駅を巡回する予定です。

さて、エスカレーターで立ち止まることを呼びかける条例は、2年前に全国で初めて埼玉県で施行。

筑波大学の水野智美准教授らの調査では、条例施行日にはおよそ6割の人が歩いて利用していましたが、その3か月後には歩く人が4割ほどに減りました。

しかし、1年後の調査では歩く人が、およそ6割に逆戻り、継続的な呼びかけが必要だということです。

実験映像では、安全装置が作動してエスカレーターが急停止した場合、歩いて上っていると危うく転びそうに…さらに、下りでは踏ん張りがきかず、体が前に飛び出してしまうことが分かります。

名古屋市消防によりますと昨年度、エスカレーターの利用者が転倒するなどして救急隊が出動した件数は140件でした。

シミュレーションで、向かって右はエスカレーターに2列で全員が立ち止まって移動した場合。

一方、左は片側一列に並びその横を歩く人を赤の点で表しています。

450人が移動する時間を比較した、その結果は?

(構造計画研究所・北上靖大シニアコンサルタント)
「両側で立ち止まった方が、全体の移動時間が早くなる傾向があると思う」

意外にも、2列で立ち止まって移動した方が、1分12秒も早く450人が移動し終えたのです。

エスカレーターでの「立ち止まり」は安全面だけではなく、混雑緩和にも役立つ方法ということがわかります。

© CBCテレビ