映画「親のお金は誰のもの 法定相続人」三浦翔平インタビュー「それぞれの目線で見て、“愛”や“家族とは”というメッセージを受け取ってもらえたら」

10月6日から公開される映画「親のお金は誰のもの 法定相続人」。少子高齢化社会といわれる今、向き合うべき「成年後見人制度」の問題を扱いつつ、“時価6億円”の値打ちがある伝説の真珠を巡った家族の騒動を描いたハートフル・エンターテインメント作品だ。

物語は、財産管理の弁護士・成年後見人である城島龍之介(三浦翔平)が、母を亡くしたばかりの大亀家の前に現れたことから、巨額な財産を巡る大騒動へと発展。大亀家の三女・遥海(比嘉愛未)は、母を死に追いやった原因は、真珠の養殖を手伝わせた父にあると恨みを募らせ…。「相続」という家族の問題に向き合った時に気付く、本当の家族の絆とは。

今回は、比嘉さんとダブル主演を務めた三浦さんにインタビュー! 役作りや伊勢・志摩ロケでのエピソードについてお伺いしました。

――今回、弁護士の役を演じられたということで、出演が決まった時の感想を教えてください。

「映画『天外者』(2020年)が終わった後に、田中(光敏)監督とお会いする機会があって、次の作品で弁護士の役をやってほしいというお話をいただきました。実は1回企画が頓挫したんですが、『寝かしてでも翔平くんとやりたいんだよね』と言っていただきまして、脚本家の小松江里子さんとも再度タッグを組む形で始まりました。台本が出来上がる前に、監督と龍之介の人物像や、大まかな構成について話をしたんです。龍之介の過去や相続の話、後見人制度などいろいろお話させていただいて、これは面白いものができるんじゃないかと思いました」

――「天外者」以来の田中監督の作品かと思いますが、役に関してどのようなことをお話されたんでしょうか?

「龍之介は幼少期にネグレクトを受けていて、それがトラウマ(心的外傷)になってゆがんだ性格の大人になってしまっているんです。『貯金の残高の数字しか信じられるものがない』と言い張っているんだけれども、心の中では母に対しての愛情に飢えていて、愛情をちゃんと認識できない、ちょっと嫌な弁護士になってしまったんです。実際、龍之介のように若くして弁護士になって、自分で会社を立ち上げるというのは本当ごくわずからしいんですね。だから、ものすごい努力をした人間なんですけれども、その背景には重い過去があって。最終的には母に少し歩み寄って、もう一度母に会ってみるんですけど、その感情の流れは監督とたくさん相談しました。自分の中にふたをしていることに気付けていない中、遥海の言葉によってちょっとふたが開いてしまう。そうかといって、完全に許したわけではないというせめぎ合い。龍之介は自分の中の気持ちの整理はつかないまま、母に会いに行くんです。その後どうなったか描かれていないんですけど」

――「母への思い」が鍵になっているんですね。

「龍之介の場合は母への気持ちが恨みになって、それを糧にして弁護士になるわけですが、そういうトラウマを抱えた人たちのその後の人生というのは、不思議と母のところに行ってしまうもので。そういったことを含めての龍之介の負の感情だったり、前に向く感情については非常に話しました」

――龍之介は一見、人から誤解されてしまったり、敵を作りやすいキャラクターではあると思うんですけど、すごく魅力的な人にも見えます。

「最初の打ち合わせの時に、『もっと悪くていいじゃないか』と提案をしたんですよ。恨みの塊を持って育った結果、お金しか信用しない、冷徹な人間で作った方がもっとエッジが効くんじゃないかと話をしたんですけど、監督が『龍之介を嫌わせたくない』とおっしゃって。一見、普通に見れば嫌なやつなんだけど、どこかかわいそうであったり、切なさがあったり、人間らしくて共感できる部分を残したいという監督の思いのもと、一緒に作りました」

――ご自身はお金というものをどういうふうに捉えていらっしゃいますか?

「その人にとって必要な分があればいいんじゃないかと思います。人それぞれの立場によって、お金の価値は変わるんだろうなって」

――もし6億円が手に入ったらどうしますか?

「何かを買うには十分過ぎる気がするけど、何かを成し遂げるために使うには足りないですよね」

――共演者の方々との撮影中のエピソードや思い出を教えてください。

「同僚の弁護士・井坂正樹役の小手(伸也)さんと一緒にいる日が多くて。今回の舞台は伊勢・志摩なので、日本神話の話を小手さんに延々としてもらっていました。小手さんの知識量は半端じゃないんです。意外と日本の神話って、深く知ってみるとめちゃくちゃ面白かったです」

――伊勢・志摩ロケでの思い出や、印象に残ってる場所はありますか?

「お弁当やケータリングを地元のボランティアの方たちが作ってくださって、毎回おいしかったことです」

――特においしかったものはありますか?

「カキと伊勢エビがおいしかったです」

――「天外者」は時代劇で、今回は現代が舞台でしたが、演出やアプローチの違いを感じましたか?

「今回はコメディーも入っていてテイストも違いますし、“愛と家族と真珠とお金”の話なので、そこにフォーカスして撮っていました。撮影手法だと、英虞湾(あごわん)をドローンで奇麗に映しているところにこだわりを感じました。あと、動きのあるお芝居が多かったです。走ったり、踊ってたり、躍動感が伝わるように撮影していました」

――最後に皆さんで踊り出すシーンは衝撃でした。

「急に踊り出しましたよね。われわれは演者は、言われたらその通りにやらなきゃいけないので。しかも、ダンスというよりかは、真珠を持って逃げ惑うんですけど、見終わった後って、踊っていたことを忘れませんでした? しばらくした後に『そういえば、踊ってたよな』と。僕も、出来上がった作品を見た時に監督はすごいなと思いました」

――今回、作品の軸になっているのが「家族」ですが、ご自身が家族に伝えたい信念や家訓を教えていただきたいです。

「うちはうち、よそはよそというのは結構徹底しています。子どもが大きくなった時にいろいろと思うことが出てくると思うけれども、今のうちからそう言っておけば、そういうもんだなと思ってもらえると思って、そこは大事にしています。あとは、彼がやりたいと言ったことは基本的には全力でバックアップして、とにかく元気に幸せに育ってほしいという思いは伝えるようにしています」

――「優しい子に育ってほしい」といったお子さんへの思いはありますか?

「感謝と反省ができて、人に優しくできる子になってほしいですね」

――監督が今回の映画のテーマとして挙げていたのが「愛」と「許し」ですが、最近許したエピソードはありますか?

「基本的に僕の中ではスリーアウト制なので、ある程度までは許しています。子どももそうですけど、3回目は怒ります」

――三浦さんが「愛を注いでいるもの」はなんでしょうか?

「家族ですね」

――最後に映画の見どころ&メッセージをよろしくお願いいたします。

「見る人によっていろいろな視点で楽しむことができると思います。1回見ただけだとよく分からなくても、2回見ると点と点がつながっていくと思います。キャラクターそれぞれの心情や目線で見て、監督の伝えたい“愛”や“家族とは”というメッセージを受け取ってもらいたいです。真珠を巡る相続の中にさまざまな思いや裏テーマがある作品なので、それぞれの視点で見てもらえたら楽しいと思います」

――ありがとうございました!

【プロフィール】

三浦翔平(みうら しょうへい)
1988年6月3日生まれ。東京都出身。2008年、ドラマ「ごくせん 第3シリーズ」(日本テレビ系)で俳優デビュー。11年、映画「THE LAST MESSAGE海猿」で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。主な出演作に、映画「天外者」(20年)、「嘘喰い」(22年)など。24年には、NHK大河ドラマ「光る君へ」への出演が控えている。

【作品情報】

映画「親のお金は誰のもの 法定相続人」
10月6日(金)全国ロードショー

少子高齢化社会と言われる今だからこそ、向き合うべき制度である「成年後見制度」(2000年に発足)の問題を、時価6憶円の値打ちがある伝説の真珠を巡る家族の大騒動を軸に描く。予想外の連続に思わず「学び」、「笑い」、「涙する」ハートフル・エンターテイメント作品。

監督/田中光敏 脚本/小松江里子
出演/比嘉愛未 三浦翔平
浅利陽介 小手伸也 山崎静代(南海キャンディーズ) 松岡依都美 田中要次/石野真子/三浦友和

取材・文/Kizuka 撮影/蓮尾美智子 ヘアメーク/石川ユウキ スタイリスト/根岸豪

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