阪神とのCS前哨戦(9月30日/10月1日)広島カープ 一岡竜司が万感のラスト登板

広島カープは、ペナントレースの全日程が終了。DeNAとのし烈な2位争い、そして 一岡竜司 の引退セレモニーと、盛りだくさんだった土・日の阪神戦を振り返ります。

9月30日(土)阪神戦(マツダスタジアム)末包の一発&矢野好守で貢献

プレイボール前には 會澤翼 の通算1000試合出場のセレモニーが行われた土曜の阪神戦。セ・リーグ王者相手のマウンドは、九里亜蓮 に託されます。

九里は、5回まで9奪三振とランナーを1人も出さないパーフェクトピッチング。勝てば2位確定の可能性がある大一番で最高の内容を見せます。

九里を援護したい打線は、プロ初先発、阪神の高卒ルーキー・門別から再三チャンスを作りますが、あと1本が出ず、試合は両チーム無得点で後半に突入します。

迎えた6回ウラ、カープは1アウト・ランナー2塁のチャンスを作り、バッターは 末包昇大 。レフトへのヒットを放ち、セカンドランナー・堂林翔太 がホームを狙いますが、タッチアウトに。

ホームベースが遠いカープでしたが、會澤がこの悪い流れを断ち切ります。百戦錬磨のベテランが、九里の好投に報いるセンターへのタイムリーヒット。待望の先制点を奪います。

しかし、直後の7回、阪神が食い下がります。2アウト・ランナー2塁・1塁でバッターはミエセス。好投を続ける九里でしたが、レフトへのタイムリーで同点に追いつかれ、この回でマウンドを降ります。

8回は、九里の後を受けて、最優秀中継ぎのタイトルが確定している 島内颯太郎 が登板。ランナーを背負っても落ち着いたピッチングで阪神打線の反撃を絶ちます。

勝ち越し点がほしいカープは、そのウラ、ここまで2安打と当たっている末包。崩されながらもはじき返した打球は、ぐんぐん伸びてレフトスタンドへ。試合前に 新井貴浩 監督から直接指導を受けた “和製大砲” の一振りで勝ち越しに成功します。

1点リードすれば、9回のマウンドは、守護神・栗林良吏 。一発出れば逆転の場面で 佐藤輝明 と対します。打球はショートに。矢野がダイビングスローし、ゲームセット。

新井監督も「ここでCSをやるんだというみんなの気持ちが凝縮された最後のプレー」と絶賛する守備でカープは阪神に勝利。新井監督は、カープ新人監督として球団最多となるシーズン74勝。この試合で勝ち投手となった島内は、球団タイ記録となる42ホールドポイントをマークしました。

広島カープ 末包昇大 選手
「流れを変えたかったので、一発出ればいいなと思って打ちました」

10月1日(日)阪神戦(マツダスタジアム)一岡 万感のラスト登板

そして迎えた、きのう(10月1日)、引退を発表た 一岡竜司 の会見が試合前に開かれました。

広島カープ 一岡竜司 投手
「現役生活12年間、専門学校からプロに入団できて2~3年できればいいなと思っていたのが正直な気持ちなんですけど、移籍も野球選手として経験できて、なおかつ12年間もできて、さらにこういう引退試合、セレモニーもしていただいて、本当に周りの方に恵まれた12年間だったなと思います。ここ2~3年は1軍の戦力になっていなかったし、モデルチェンジじゃないけど、スタイルを変えてはいたけど、正直、1軍で通用するレベルにはならなかったというか、ずっと思っていた気持ちなので、それを一週間前くらいに球団に言わせてもらいました」

会見後、選手たちの前であいさつをした一岡。ウォーミングアップ中には新井監督やチームメイトと談笑する姿がありました。

勝てば、2位確定となる今シーズン最終戦。一岡や 今村猛 とともに「カピバラ3兄弟」とも言われた 大瀬良大地 が、一岡の登場曲でマウンドに上がります。

その大瀬良、初回、いきなり1アウト・満塁のピンチを作りますが、5番・佐藤輝明。つづく6番・ノイジーを三振に斬って取り、得点を与えません。

3回、大瀬良がノーアウト・2塁・1塁のピンチを背負うと、新井監督が動きます。早くも大瀬良から 大道温貴 に継投。代わった大道は、1アウト・満塁として、またも打席は佐藤輝明。しかし、ここはセンター前に運ばれ、先制を許します。

地元でのCS開催に向け、是が非でも勝ちたいカープは、直後の3回ウラ、ランナー1人を置いて1番の 小園海斗 。「つなぐ気持ちでいった」という当たりは、ライトスタンドに飛び込む逆転ツーランホームラン。9月の打線を引っ張ったバットマンの一打で試合をひっくり返します。

リードを奪った新井監督は、続く4回のマウンドに、なんと2年ぶりのリリーフ登板となる 床田寛樹 を送ります。しかし、その床田が、誤算でした。味方のエラーもからみ、2イニングを投げて4失点。逆転を許します。

なんとか追いつきたいカープは、リードを許したそのウラ。先頭打者の末包が、ツーベースヒットで出塁すると、前の打席でホームランを放った小園。この日、3打点目となるタイムリーヒットで2点差に詰め寄ります。

そして迎えた6回表、大歓声の中、マウンドに上がったのは、この日が最後の登板となる 一岡竜司 。

実況
「新井監督が、一岡竜司にボールを渡しました。ナインは守備位置にまだつきません。全員がマウンドを囲んでいます。あまりこういう光景は見たことがありません。西川龍馬が外野のはずなのにマウンドの後ろにいる。(投球練習)最後のコールです。一岡竜司がマウンドに上がっている。この光景だけでいかにチームに貢献したか、いかに愛されたかがわかります」

一岡は、阪神の島田を相手に全てストレート勝負。そして8球目…。外角への渾身のストレートで見逃し三振! 役目を終えた一岡は、3連覇を果たしたときにともにブルペンを守った 中﨑翔太 に後を託し、現役最後のマウンドを降ります。

その後、カープは9回に追い上げを見せたものの、あと一歩届かず、リーグ最終戦は1点差で惜敗。2位確定とはならず、今シーズンの最終順位は、4日のDeNAの結果を待つことになりました。

広島カープ 新井貴浩 監督
「開幕前のわたしたちのチームに対する評価は決して高いものではありませんでした。その悔しさをバネに『よし見とけよ』という思いで選手ががんばってくれたおかげでCSに進出することができました。正直に申しまして、きょうの負けはめちゃくちゃ悔しいです。この悔しい気持ちをもって、全員でCS戦っていきます。ありがとうございました」

シーズン終了セレモニーに続いて、一岡の引退セレモニーが行われ、プロ12年間の思いをファンに語りました。

広島カープ 一岡竜司 投手
「カープファンの熱い声援、一体感のある応援はいつもぼくの背中を、そして、きょうも押してくれました。ありがとうございます。きょうのような赤く染まったスタジアム、このマウンドからの最高の景色はきょうで引退しますが、一生忘れることはありません。本当に幸せな12年間でした。ありがとうございました」

穏やかな人柄と熱いマウンドさばきでファンやチームメイト、スタッフから愛された一岡。最後にグラウンドを一周し、ファンに別れを告げました。

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