●本社インタビュー
サッカーJ3・カターレ富山が悲願のJ2復帰へ昇格争いを繰り広げる中、Jリーグの「秋春制」移行に向けた議論も大詰めを迎えている。秋春制で冬場もシーズンになるとカターレには不利ではないかとサポーターらから懸念の声が上がり、クラブ側は慎重に対話を重ねてきた。左伴繁雄社長は2日までに富山新聞社のインタビューに応じ、当初の課題が改善されてきたとした上で、今月中にクラブとしての賛否を表明する意向を示した。インタビュー要旨は次の通り。
秋春制移行時の冬の試合について、懸念する必要はありません。現行のオフシーズンと同じくらいのウインターブレーク(中断期間)を設けて試合をせず、増えても2試合ぐらい、という前提になっています。
●水曜開催が増加
冬に加え、夏の開幕前にもオフシーズンができ、年間で公式戦を行う期間が短くなるので、平日の水曜開催が増えます。過密日程になりますが、アウェー戦が重なるわけではなく、サポーターに遠征の負担が続くわけでもありません。
年2回のオフができるとキャンプ費用が約1400万円増える。この増額分に対するJリーグからの補填(ほてん)がほぼ決まりました。シーズン移行してもチーム間の財務的な不公平は発生しないと、はっきりと言えます。
●置いてけぼり
この機会にJリーグの危機感についても説明させてください。この30年でJリーグは欧州を中心とした世界の主要リーグとの収入差が大きく開き、置いてけぼりをくらっています。原因は放映権料の違いです。
Jクラブがアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で好成績を収めれば、Jリーグの放映を増やそうという流れも起きます。世界で勝ち上がるためにも、ACLの秋春制に合わせた方がいいという考えにつながります。
放映権料が増えれば、Jリーグは分配金としてJ2、J3クラブにも還元してくれる。カターレにとって対岸の火事ではありません。リーグ全体の価値を上げることが大事なのです。
●安易に賛成しない
秋春制の当初の課題は改善されてきました。しかし、積み残しの問題もあります。その一つがスタジアムの問題でしょう。
カターレのように陸上競技場をホームとするクラブにとって、秋春制では試合スケジュールを組めなくなる可能性がある。現行では1月頃に試合日程が決まっていますが、秋春制では5月頃まで固まらない。陸上の大会などの予約が先に入ればサッカーの試合に使えなくなる。スタジアム難民になりかねません。
水曜開催が増えれば、仕事を終えたサポーターが応援に行こうにも、県総合運動公園(富山市南中田)では遠い。解は一つしかない。まちなかに専用スタジアムを造ることです。
シーズン移行の必要性は総論としては認めつつも、興行ができなくなる危険性が排除できない限り、カターレの社長としては安易な賛成はできません。