岩崎良美「青春」浅倉南の目線で歌われる 第2期【タッチ】エンディングテーマ  ラブコメとスポ根の絶妙なバランスで人気を呼んだファンタジー作品「タッチ」

ラブコメとスポ根が絶妙なバランスで人気を呼んだ「タッチ」

「タッチ」は、ラブコメとスポ根の絶妙なバランスで人気を呼んだファンタジー作品だ。

わたし、浅倉南。明青学園高等部3年生。 お隣に住んでいる仲良しの男の子、上杉和也くん、かっちゃんに、「甲子園に連れて行く」と小さい頃に言われた。彼は勉強もスポーツも万能で、女の子にもとても人気があった。

わたしと、彼と、双子のお兄さんである上杉達也くん、たっちゃんは、幼稚園からずっと一緒の幼馴染。気心の知れた最高の友達。積極的な彼に告白されたけれど、わたしが本当に好きなのは、目立たない、たっちゃんのほう。たっちゃんのお嫁さんになりたい、ずっとそう思っている。

わたしたちは同じ学校に進み、中等部でかっちゃんは野球部に、わたしはバレーボール部に。高等部で、わたしは野球部のマネージャーになった。

かっちゃんは高等部でも1年生から野球部のエース投手になり、憧れの全国高校野球選手権大会を目指す高校球児のひとりになった。その入り口に立った日、彼は交通事故に遭い、もう二度と会えない人になってしまった。

高等部でボクシング部にいたお兄さんのたっちゃんが野球部に入り、この2年間、ずっと野球を頑張ってきた。わたしは新体操部との掛け持ちで3年生のはじめまで野球部のマネージャーをしていた。

そして、今年の夏、たっちゃんが投手をつとめる、わたしたちの学校が、甲子園に出ることになったの!

浅倉南目線で歌われたエンディングテーマ「青春」

その主人公、浅倉南目線で歌われているのは、岩崎良美さんの「青春」。フジテレビで放映されたアニメ「タッチ」の第2期エンディングテーマで、オリコン最高位10位、22週にわたってチャートインするロングヒットになった。

アニメでは、和也が交通事故で夭折し、達也が野球部に入部するところで第2部となり、オープニング・エンディングテーマとも第1部から変わった。「青春」は、1985年10月20日放送の第28話から1986年6月15日放送の第62話までエンディング・テーマとして使用された。ちょうど、アニメでは達也が白球を追いかけていながら甲子園には届かなかった時期にあたる。

高校3年生の運動部の部活は、夏の大会が終わると引退になる。

それまでの2年余り、ずっと、達也をはじめとした野球部の仲間たちが白球を追いかける姿をマネージャーとして一緒に過ごしてきた南さんが、ある日グラウンドを久しぶりに訪れたときの、時を止めてしまいたいという心象風景が、「青春」のリリックとして綴られている。作詞は康珍化さん。

眼を閉じると浮かぶ、汗と土埃にまみれた彼らの姿。

グラウンドからベンチに足を向けると、ユニフォームの忘れ物。誰のだろう?

もうすぐ、このグラウンドにも、学校にもさようならをする日が来る。

新体操部と、野球部のマネージャーを掛け持ちする、忙しくも楽しい日々だった。

帰らぬ人となったかっちゃんと一緒に、幼い頃の夢をかなえてくれた、大好きなたっちゃん、ありがとう。わたし、こんなに幸せでいいのかな。このまま、時を止めてしまいたい。

その強い思いは、歌の中で、Stay Stay Stay…と3回繰り返すことで表現しているように見える。

同級生に恋をしている高3女子の心情が痛いほど伝わってくる

小さい頃から好きなのは、たっちゃん。

隣に住んでいるのに、いえ、隣に住んでいて、小さい頃からずっと一緒だからこそ、面と向かって好きとは言えない。

もうすぐ、この制服ともお別れする日が来る。高等部を卒業する日がやってくる。

好きな人と会えなくなってしまう日が刻一刻と近づいている。

このあたりは普遍的な、同級生に恋をしている高3女子の心情が痛いほど伝わってくる。

「せせらぐ心」という言葉が響く。いつかは思い出という小舟になり、時の河に流されてしまうのが怖い。その前に、せめて、好きだってことを伝えておきたい。

こんな南さんの心情を、南さんの先輩マネージャーのような立ち位置で、岩崎良美さんが優しく、ときにせつなさをこめて、瑞々しく歌を聴かせている。

でも、南さん、心配しなくてもいいよ、と言いたい。

この後、学校が甲子園に出ることが夢だった南に、達也が告白する。

「上杉達也は、浅倉南を愛しています 世界中の、誰よりも」

テレビアニメ版は、達也が甲子園で第一球を投げたところで終わっている。

第58回選抜高校野球大会で演奏された「青春」

最後に、この時期の事実をお伝えしておく。

1986年3月26日に開会式を迎えた第58回選抜高校野球大会。当時、全国で甲子園を目指している高校生は13万人余り。そのなかの32校、480人の行進の際に、岩崎良美さんの「青春」がマーチングアレンジで演奏された。開会式には4万人の入場者があったという。

当時の雑誌・週刊明星(1986/4/10号)には、岩崎良美さんは「入場行進曲に決まった時には責任重大だと思い、高校野球のことを全然知らなかったので猛勉強した」という趣旨の記事が掲載されていた。

カタリベ: 彩

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