ジャニーズ事務所、61年間の記録と歴史に幕――。

ジャニーズ事務所が「SMILE-UP.」の名称に変更して、創業者のジャニー喜多川氏(19年に87歳で死去)から性被害を受けた被害者への補償会社として生まれ変わる。被害者補償の開始は11月以降になるが、現時点で弁護士3人が開設した「被害者救済委員会」には478人の申し出があり、補償を求めているのは325人。終えた段階で廃業し、ジャニーズの灯は完全に消える。

10月2日、都内で開かれた記者会見には東山紀之社長、ジャニーズJr.の育成を担う「株式会社ジャニーズアイランド」の井ノ原快彦社長、弁護士の木目田裕氏、山田将之氏が出席。先月7日以来2度目の会見には、100%の株式を保有している藤島ジュリー景子前社長は出席しなかった。欠席せざるを得なかった理由を、井ノ原が代読した。

それは、「母メリーは、私が従順なときはとても優しいのですが、私が少しでも彼女と違う意見を言うと気が狂ったように怒り、叩き潰すようなことを平気でする人でした。20代のときから、私は時々過呼吸になり倒れてしまうようになりました。当時病名はなかったのですが、今ではパニック障害と診断されています」「心療内科の先生に『メリーさんはライオンであなたは縞馬だから、パニック障害を起こさないようにするには、この状態から、逃げるしかない』と言われた」など、親子関係がすでに破綻していたという衝撃的な内容だった。

同事務所には現在200名を超えるタレントがいる。今後は、新たに設立されるエージェント会社が個人、グループと業務契約を結ぶ。エージェント会社の社名はファンクラブを通じて公募し、東山が社長を務め、井ノ原が副社長に就任する。東山は被害者への補償に専念するため、年内いっぱいでタレント活動から退くことを先月の会見で発表していたが、井ノ原はジャニーズJr.の育成を主としたジャニーズアイランドの社長でもあるため、今後はエージェント会社、さらにタレント業の3足のワラジをはくこととなる。

これについては、「ジャニーズJr.の発掘育成をやっております。僕は副社長という立場ではありますが、彼ら(Jr.)を担当する副社長だと思っていただけたらうれしいです。今の芸能の現場を知りながらやっていく」と、育成を継続したエージェント会社の副社長兼タレントのようだ。

1度目の会見は4時間超え、2度目の今回はそれを踏まえて2時間の制限を設けたが、一部の記者が株主総会のように大声を出して、司会者の男性に対して食ってかかるシーンが何度も見られた。記者からすれば、あらかじめ「1媒体1質問」の規制を設けていたにもかかわらず、長尺で複数の質問をする、批判めいた質問を浴びせる記者を避けている、という“正義”だった。

そんなカオスな雰囲気のなか、司会者から当てられた男性記者が開口一番、「『実話ナックルズ』です……」と言った瞬間、場内は大爆笑に包まれた。会見は生中継、配信されていたため、「実話ナックルズ」はX(旧ツイッター)でトレンド入り。ファインプレーを称賛する声が相次いだ。ちなみに、同誌最新号のメイン記事は「極上フーゾクの歩き方」で、コンセプトにブレがない。

会見を終えたおよそ2時間後、岡田准一が11月末での退所を発表した。木村拓哉はエージェント契約に合意したものの、10歳からジャニーズひと筋で、エージェント契約に対する知識が浅い20代~30代のタレントたちからは、ファンクラブ、SNSを通じてとまどいの声が見て取れる。

ジャニーズの完全消滅は崩壊を意味するのか。もはやテンプレ化しつつある記者会見に、3度目はあるのか。難題は依然として山積だ。(取材・文 伊藤雅奈子)

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