「命助けたい」志に敬意 茨城県警察学校 茨城新聞記者が体験入校 法律や逮捕術 日々鍛錬

学校生たちに交じって授業を受ける記者(中央)。教室内は独特の緊張感があった=茨城町上石崎の県警察学校

新人警察官が、現場に配属される前に半年から10カ月にわたって過ごす茨城県警察学校(小泉辰也学校長、茨城町上石崎)。学校生は毎日、体を鍛えながら法律や警察実務、容疑者制圧のための逮捕術などを学び、県民の安心と安全を守る一人前の警察官を目指して奮闘している。記者が同校に体験入校し、厳しい訓練の一端を味わった。

■早朝から訓練

9月25日午前6時半、県警察学校のサブグラウンド。集まった学校生とともに朝の点呼を受ける。間もなく、軽快な音楽に合わせて始まるのが「警察体操」。「体をほぐすラジオ体操のようなものか」と思ったら、腕立て伏せがしっかり組み込まれていた。

体操後にも腕立て伏せ90回、加えてランニング2キロ。朝の「軽い」準備運動が、運動不足の記者にはきつい。既に虫の息だ。酸欠で頭が痛い。

そんな調子だったので、校内の食堂でも手に力が入らず、箸をうまく操れない。「ご飯、汁物おかわり自由」の張り紙はあったが、朝から疲れ果て、食事を流し込むだけで精いっぱいだった。

食堂は3食計約1600円、3千キロカロリー。寮に住む学校生たちは毎日、この食堂か弁当で食事を済ませる。周りでは、山盛りのご飯をぺろりと平らげる姿も。4月の入校式より男女ともに体がたくましくなっているのも納得だった。

■本番さながら

一般の学校と違い、同校で講師を務めるのは現役の警察官だ。法律の知識とともに、現場での経験を学校生に伝える。

飲酒検問の訓練では、2人組の学校生が飲酒の疑いのある車両を安全な場所に誘導。「酒なんて飲んでねえよ」といらついた様子で話す運転手役の教官相手に、「どこのお店で食べたの?」「あのお店、お酒も提供してるよね?」。飲酒検知の結果を見せながら、法律の知識も駆使して対応に当たる学校生たち。教官は終了後、良かった点を挙げながらも「作業に夢中になって相手から目を離していた。逃げられてしまうよ」と改善点の指摘も忘れなかった。

授業には座学も多い。刑事訴訟法の講義では、教官が現行犯逮捕の要件とともに、実務上の注意事項を紹介。「現場に出たときに自信を持って逮捕できる?」「逮捕は人権侵害の度合いが大きく、間違いがあってはならない。うろ覚えの知識では逮捕すべき者を逮捕できず、誤認逮捕にもつながる」と伝えていた。

■頑強さを実感

続いて記者が臨んだのは、最小限の打撃で犯人を制圧する「逮捕術」の訓練。防具をまとい、短い竹刀で学校生に突きを打ち込むが、華麗な足さばきでよけられ空振り。その刹那、懐に飛び込んできた学校生に肩や胴を痛打される。ならばと、今度は左手のガードを上げて近づくも、今度は死角から蹴りが飛んできて制圧されてしまった。

学校生たちの頑強さを最も実感したのは、重さ約5キロのジュラルミン製盾を抱えて約3キロ走る訓練。隊列から遅れがちになる記者に、教官から叱咤(しった)激励が飛ぶ。何とか完走したものの、息を整える間もなく、盾を持ちながらのリレー競争が始まる。元気に走る学校生たちにすっかり感服した。

同校では9月25日現在、120人の警察官の卵たちが訓練に励む。その一人が福島県大熊町出身の中野風夏巡査(19)だ。2011年の東日本大震災で、避難者と逆方向へ向かう警察官の姿が忘れられず、警察官を志した。

「命の危険にある人たちを助けられる警官になりたい」と中野さん。そんな学校生たちの話を聞きながら、頼もしさと警察官への敬意がこみ上げた。

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