研究費「選択と集中」に疑問符 ノーベル賞級の発見には500万円以下を大勢に 筑波大と弘前大

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ノーベル賞級の発見やイノベーション(革新)をもたらす研究を促すには、少額の研究費を多くの研究者に配ることが有効だとする論文を筑波大学と弘前大学の研究チームが発表した。政府は重点分野に科学研究費を多く配る「選択と集中」の姿勢だが、逆の手法の方が費用対効果が高い可能性があることを示唆している。

研究チームは、1990年代から2010年代にかけて生命科学・医学分野の約18万件に配分された科研費を調査。金額・研究分野と、発表論文の数やノーベル賞級のトピック(テーマ)の数などの研究成果の関係性を調べた。

その結果、多額の研究費を受給するほど多くの研究成果を発表できるが、数年間の活動に対して配られる総額が5000万円を超えると投資の効果は横ばいになり、ノーベル賞に結びつく画期的な研究成果は受給前より減少する傾向が確認された。逆に、年間500万円以下の少額研究費を多くの研究者に配る方が効率的であることがわかったという。

結果を受けて研究チームは、業績が少ない研究者らに小規模の研究費を分配することが最も効果的であると結論づけた。2020年代以降の研究費について、筑波大の大庭良介准教授は「日本の経済状況ともかかわってくるかと思います。インフレ、または円安が進んだ場合には500万円では足りなくなると考えられますが、その時の日本と世界の経済状況に応じた金額であればよいと考えています」と話した。

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