アキュラと決別、MSRが今季限りでのIMSA参戦休止を発表「決断は簡単なものではなかった」

 10月3日、『アキュラARX-06』でIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦しているメイヤー・シャンク・レーシングw/カーブ・アガジャニアン(MSR)は、今季最終戦をもってシリーズ最高峰のGTPカテゴリーから退くことを発表した。アメリカ・オハイオ州に本拠を置くチームは今後、来季2024年にプログラムの拡大を予定しているNTTインディカー・シリーズに焦点を当てることになる。

 2004年以来、IMSAが運営するすべてのトップレベルシリーズに参戦してきたMSR。マイク・シャンクとジム・メイヤーの両名がオーナーを務めるチームは、同門のウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ・オートスポートが来年シングルカーからダブルカー体制へとプログラムを拡大することを決めるなか、アキュラとの決別後もGTPクラスのグリッドに残るための別の選択肢を模索してきたものと見られている。

 MSRの共同オーナーであるシャンクは8月の時点で、IMSAの計画が「いまはまだ、はっきりとしていない」と記者団に語ったが、今回の発表のなかでトップレベルのスポーツカーレースから「1年離れる」ことを改めて表明することとなった。

“短期の離脱”を示唆するこの言葉は、チームと別のLMDhメーカーとの関係を匂わせるものだ。長年にわたりホンダ/アキュラとの関係を築いてきたMSRは、早ければ2025年までにウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦する可能性がある『アルピーヌA424』のプログラムと関連があると目される。

「IMSAから1年離れるという決断は、決して簡単なものではなかった」とシャンク。

「我々のチームのメンバーは、このチームで生活し、このクルマに携わり、レースの旅に参加することに人生の大半を捧げてきた。その多くは20年近くを私たちとともにしている。ジム(・メイヤー)と私にとっての主な焦点は、そんな彼らの準備を整え、皆が問題ないことを確認することだった」

「ワークショップでは多くのプロジェクトが進行中で、もちろん一部のスタッフは成長中のインディーカー・プログラムを手伝うことになる」

「エリオ(・カストロネベス)のため3台体制となるインディアナポリス500参戦はとても大きなことで、彼が5度目のインディ500制覇を成し遂げるために、可能な限り準備できるよう、適切な人材を用意できたことをうれしく思う。そして、(ふたたび)IMSAプログラムの準備が必要になったときにも、この素晴らしいグループが一緒にいるため、準備は整っている」

2023ロレックス・アット・デイトナ(デイトナ24時間)ウイナーとなったメイヤー・シャンク・レーシングw/カーブ・アガジャニアン

■「いまは居ないが、永遠ではない」

 今年の開幕戦デイトナ24時間レースで優勝し、その後タイヤプレッシャーに係るデータ操作のスキャンダルでIMSAからポイント剥奪のペナルティを受けたMSRだが、来週末に予定されている2023年シーズン最終戦『モチュール・プチ・ル・マン』ではGTPクラスタイトルの可能性を残して臨むことになる。

 シャンクは耐久レースプログラムを通じて関わった人々に向けて感謝の言葉を述べている。「私とこのチームの成長に大きな影響を与えてくれた、たくさんの人々に感謝したい」

「ジム・フランス(IMSA会長)は2004年にこのシリーズに参加して以来、私たちをサポートしてくれている。彼には感謝してもしきれない」

「また、ジョン・イケダ(アキュラ副社長)、デビッド・ソルターズ(HPD社長)そしてホンダ、HPD、アキュラの皆がMSRにチャンスを与えてくれて、ここ数年私たちがこのプログラムを運営することを信頼してくれた。そのおかげで、私たちは一緒に素晴らしいことを成し遂げることができた」

「私たちと一緒に戦ってきたクルーやドライバーの皆、さらに我々には非常に多くのリストがあるが、彼らに対しても感謝しきれない思いでいっぱいだ。彼らのほとんどは、私がグランダムでこのチームを始動させて以来、私の人生を変えてくれた」

「私が言ったように、我々はどこにも行かない。いまは(そこに)居ないだろうが、間違いなく永遠ではない。来年は(スポーツカーレースから)一歩引いて、インディカー・プログラムに集中することがチームとして重要になるだろう」

最終戦プチ・ル・マンで見納めとなるメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)の60号車アキュラARX-06

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