奈良市が「鹿苑」を立ち入り調査 - 「奈良の鹿愛護会」鹿虐待疑い

雄鹿の収容された特別柵で調査する奈良市職員=3日、奈良市春日野町の鹿苑

 「奈良の鹿愛護会」が運営する保護施設「鹿苑(ろくえん)」(奈良市春日野町)で収容された鹿に十分な餌を与えないなどの虐待の疑いがあるとして同会の獣医師が通報書を提出した問題で、奈良市は3日、鹿苑への立ち入り調査を行った。

 午後2時ごろ、市保健所所属の職員2人と獣医師2人の4人が鹿苑を訪問。農作物に被害を与えた鹿などを収容した「特別柵」へ入り、通報した同会の獣医師、丸子理恵さんの説明を受けて鹿たちの状態を動画におさめながら調査した。餌の量や種類、水飲み場、餌やり場、日照条件、地面のコンクリートや飼育面積など特別柵内の飼育環境も調べた。 

 調査終了後、稲葉好之・市保健医療部保健所保健衛生課長は「自分は専門外なので言及できないが、調査した獣医師によると通報があったような栄養不足の鹿は確認できなかった」とし、「餌の量を確認したところネグレクトには当たらないのではと感じた。何をもって虐待か、さらに調査を重ねて鹿に特化した獣医師など専門家に意見を求めて今月中をめどに判断していく」と話した。

 丸子さんは「餌が足りなくて栄養状態が悪かったり、痩せている鹿の見方について説明した。飼育環境の改善を求めたい」と訴えている。

 一方、同会の山崎伸之事務局長は「虐待がなかった事実をできるだけ早く証明してほしい」と話した。

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