耳をひっぱってぐるぐる…認知症予防に「目覚めの1分耳ほぐし」

(写真:PIXTA)

年齢とともに不安になってくるのが“脳の衰え”。認知症になる人は増え続け、2025年には65歳以上の5人に1人、約700万人が認知症になると推計されている。

「まだ自分は大丈夫」と思っている人も多いと思うが、日常生活に支障をきたすほどではないものの、記憶力や注意力などの認知機能に低下が見られる状態をMCI(軽度認知障害)といい、認知症の一歩手前とされる。

MCIの人も現在約400万人いるといわれ、MCIの時期に何もしないで放置すると1年で10%、4年で40%が認知症に移行するという報告もある。

「MCIになると必ず認知症になるというわけではありません。対策を講じることで正常な状態に戻る可能性もあります。いつまでも元気で過ごすためにも、早期発見をして予防と治療に結びつけることが大切です」

そう語るのは、認知症予防専門の「ひろかわクリニック」(京都府宇治市)の広川慶裕院長だ。

■耳周辺の筋肉をゆるめ脳の健康をキープ

どんな治療法があるのだろうか。

広川院長は、台風など気圧の変化で起きる気象病をはじめ、自律神経が乱れたときに行うと症状が緩和されるという「耳マッサージ」が、「認知症の予防にも効果がある」と提唱する。

「認知症を予防するために私のクリニックでは、食事や運動、生活習慣の改善などさまざまなことを行います。そのうちのひとつに『耳マッサージ』があり、患者さんには毎日行ってもらっています。アルツハイマー型認知症の場合は、特に海馬の周辺の血流が落ちてきます。耳マッサージで脳に血流を促すと、細胞に酸素と栄養が行き渡るようになるので、脳の機能が回復してくるのです。個人差はありますが、早い人では毎日の耳マッサージを行ってから、2~3週間で効果が出てきたケースもあります」(広川院長・以下同)

海外の研究でも、耳のツボを押すなど耳を刺激することで脳への血流を促すと、徘徊やうつ、怒りっぽくなる、暴力をふるうなど、認知症に伴って現れる行動、心理状況(BPSD)が改善するといった報告もある。

「中医学でも、耳には体全体につながる12の経絡が集まっています。経絡とは気やエネルギーの通り道で、そこを押して刺激を与えることで、全身の臓器が活性化してくると考えられています。頭がスッキリして、記憶力自体が改善する可能性がありますので、スキマ時間にいつでもどこでも簡単にできる『耳マッサージ』を覚えておくと便利ですよ」

やり方は簡単。全部手順どおりにやる必要もなく、1日1~3分くらいの時間でOK。

寝起きなど頭がぼんやりしているときにやると効果絶大で、逆に寝る前などはやらないほうがいいという。

■認知症予防に効果!「耳マッサージ」4

【1】耳折り

まずは、「耳折り」から。最初に「耳折り」を行うと、一気に血流がアップして覚醒するので、両手を使って両耳でやってみよう。

「手の小指側を使い、耳をギョーザの形のように前側に折ります。次に手の親指側で耳を上から下に押さえて上側の耳を折り、最後にもう一度手の小指側で耳たぶを下から上に折ります。それぞれ3~5秒程度静止させます。耳全体が刺激され、血流が促されます」

【2】耳もみ

次に「耳もみ」を。耳にはツボが集中していて、押すと不調が改善するといわれている。

「外側の上部には自律神経、耳たぶには疲れ目、耳の前方の突起部分『耳珠(じじゅ)』には鼻炎やホルモンにかかわるツボがあります。耳の外側上部から耳たぶにかけて指で押していきましょう。痛みを感じる部分があったら、そのツボの内臓にあたる部分が弱っているというシグナルです」

【3】耳ひっぱり

3番目は「耳ひっぱり」を。親指と人さし指で耳をつまみ、両耳を外側に向かってひっぱり、数秒間キープして勢いよく離す。

耳をひっぱると、耳と頭の間にすき間ができて、「蝶形骨(ちょうけいこつ)」が自由になる。

「神経の通りがよくなるとともに、血流もよくなり、こりや疲れが解消されるといわれています」

そのあと、耳を上方向、下方向に順にひっぱりパッと離す、を繰り返しトライしよう。

【4】耳まわし

最後は「耳まわし」だ。親指と人さし指で耳をつかみ、外側にひっぱり、数秒間キープしたら、上から下へ向かってぐるぐる回す。しばらく回したら、次は下から上へ、逆方向に何度か回す。

耳周辺の筋肉をゆるめることで、首や肩こり、頭痛、不眠が解消されるという。不眠は認知症のリスクを高めるひとつなので、耳マッサージは習慣化させたいところ。

「血流を促すため最初に『耳折り』を行ったほうがいいのですが、基本、順番や時間は適当でもかまいません。長続きの秘訣は気楽にやることなので、一つでもいいので耳マッサージを毎日続けましょう」

脳の健康と若さをキープするためにも、毎日トライしよう。

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