別府市の「太陽の家」が山下理事長の半生記を発行 障害者への理解促進へ職員が提案【大分県】

山下達夫理事長(左)と執筆した宮原実乃さん。「多くの人に読んでほしい」と呼びかけている=別府市内竈の太陽の家
障害のある山下理事長の半生をつづった「四肢麻痺 だからなに」=別府市内竈の「太陽の家」

 【別府】社会福祉法人「太陽の家」(別府市内竈)は、理事長を務める山下達夫さん(64)の半生をつづる「四肢麻痺(まひ) だからなに」(A5判、123ページ)を発行した。山下さんは法人の設立以降、初めての障害のある理事長。不屈の精神で何事にもパワフルに取り組んでいる。「いろんな立場の人の生き方のヒントになれば。多くの人に読んでほしい」と話している。

 太陽の家は、整形外科医で「障害者スポーツの父」と呼ばれた故・中村裕(ゆたか)博士の創設。山下さんが就任するまで、歴代の理事長は全員医師だった。

 本の製作は職員からの提案。「山下理事長の存在自体が中村先生の考える共生社会を具現化している」とし、障害者への理解促進のためにも山下さんの歩んだ道を紹介する必要性があると考えたという。

 山下さんは1959年、山口県下関市生まれ。子どもの頃、ポリオを発症し、後遺症で四肢麻痺に。地元の養護学校を卒業し、77年に太陽の家に入所した。84年、三菱商事太陽に転職し、2014年に社長就任。18年から現職。

 本は山下さんが語る内容を、職員の宮原実乃さん(66)=経営企画課=が聞き書きした。「思春期の憂うつ」「納税者になる」「湯の街別府癒やし力」「運を呼び寄せるコツ」など20章で構成。人生を振り返り、印象のあるエピソード、日頃から周囲に語る内容などをまとめている。

 中には「山下語録」が並ぶ。「『障がいは個性』には違和感しかない」「造語『合理的配慮』を『普通の心遣い』と言い換えている」「感動される人から感謝される人へ、と思っている」など本音を語る。

 スポーツジャーナリスト増田明美さんら2人が応援メッセージも寄せている。

 「元気になる本。こんなに波瀾(はらん)万丈だったとは驚いた」と宮原さん。山下さんは「障害のある人もない人もチャレンジできる場をつくってほしい。この本で障害者への理解が広がれば」と話している。

 1冊千円。太陽ミュージアムとサンストアで販売。問い合わせは太陽の家(0977.66.0277)。

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