内水氾濫 AIで監視 取手・双葉 茨城県が実証実験

実証実験のため県が設置したAIを活用した監視カメラ=取手市双葉地区

茨城県は「内水氾濫」の早期把握と避難情報発信につなげようと、人工知能(AI)を活用したカメラで高リスク地点を監視する実証実験に乗り出した。6月に浸水被害を受けた同県取手市双葉地区にカメラを設置し、水路や道路の増水・冠水状況をAIが判断、県や市の防災担当者に通知する。各地で内水氾濫の予測が課題となる中、将来的な監視手段の一つとして有効性を検証する。

実証実験は、6月初めの大雨で浸水被害に見舞われた取手市双葉地区の北側と南側の排水路に加え、床上浸水した認定こども園「つつみ幼稚園」前交差点の計3カ所に監視カメラを設置した。事前に設定した水位への到達をAIが判断し、県や市の防災担当職員に通知する仕組み。実験は11月末まで行う。

2カ所の排水路では、通常の水位から約10センチと20センチ上がった状況をAIがカメラ映像を通して判定する。交差点では、道路上の冠水状況とともに、基準として特定の対象物にどの程度、水位が近づいたかで通知するタイミングを判断する。

増水や冠水を早期に把握し、周辺住民の迅速な避難誘導につなげるのが狙い。実証実験では、水位の増減や冠水の状況がAIによって正確に判定や通知ができるか検証する。

県情報システム課によると、AIによる監視カメラは水位計が不要なため電柱などに設置しやすく、低コスト。普段は水のない場所などでも観測できることから、「内水氾濫リスクの高い地点に設置することで、被害の早期把握が期待できる」という。

河川氾濫の備えは、周辺住民への避難指示や注意を促す際の目安となる水位が特定の川などで定められている。一方、雨水の排出が追い付かず、水路やマンホールなどから水があふれて地域が水に漬かる内水氾濫については、発生場所の迅速な特定や避難情報を出すための設定が難しい。

県が6月に実施した調査によると、県内で内水氾濫が発生する恐れがあるのは29市町村の136地区に上る。このため、内水氾濫への備えや避難情報を出すための目安設定に向けて検討し、学識経験者からは「内水氾濫リスクが高い地域へのモニタリングの必要性」について指摘を受けた。

県防災・危機管理課は「内水氾濫リスクのある地点をカメラやセンサーを通し監視することで、速やかな情報伝達につながる」として、今後検討を進める方針だ。

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