【MLB】 見切られたゴーズマンの魔球 ワイルドカード第1戦の勝負を分けたツインズ打線のアプローチ

写真:負け投手となってしまったブルージェイズ・ゴーズマン

日本時間4日、ついにプレーオフが開幕した。第1戦を任されたザック・ウィーラー(フィリーズ)やジョーダン・モンゴメリー(レンジャーズ)らのエリート投手が好投を見せて勝利をもたらした一方で、プレーオフでらしくないパフォーマンスを見せてしまった投手もいた。

特にア・リーグのサイヤング賞ファイナリスト候補でありながら、初戦で負け投手となったケビン・ゴーズマン(ブルージェイズ)は、ツインズに19年ぶりのプレーオフでの勝利を献上してしまった。

ゴーズマンのスタイルといえば、“球界最高の決め球”とも言われる伝家の宝刀を持つことで知られる。

そのゴーズマンの決め球スプリッターは、先発投手としては最高の空振り率(空振り÷全スウィング)43.2%を誇り、球種別奪三振ランキングではメジャー2位の127三振をゴーズマンにもたらしていた。

しかし、ツインズ打線はゴーズマンのスプリッターを完全に見切っていたようだ。

今日のゴーズマンは速球の平均球速がシーズン平均をおよそ1キロ上回るなど、かなり気合が入っていた。伝家の宝刀であるスプリッターもシーズン以上に惜しみなく投じたが、奪った空振りはわずか4個に留まった。

それどころか、そもそもツインズ打線はスプリッターに対して全く手を出さず、全31球のゴーズマンのスプリッターのうち、スウィングを仕掛けたのはわずか10球。そして、ゴーズマンのボールゾーンのスプリッターに対するスウィングもわずか6球に留まった。ゴーズマンのスプリッターは全体の74%がボールゾーンに投じられ、ボール球を振らせるのが持ち味なのにも関わらずだ。

このスプリッターに対するスウィング率32%は、ゴーズマンにとっては今季ワースト1位、同球種へのボール球スウィング率26%は今季ワースト2位にあたる数字になる。ツインズ打線はゴーズマンのスプリッターを完全に見切っていたのだ。

球界有数の決め球であるゴーズマンのスプリッターに対して、なぜツインズ打線はいとも簡単に対処できたのか?

これに関しては、ツインズ打線はゴーズマンのスプリッターへの対処法を完璧に見出しているとしか言いようがない。

実はゴーズマンはシーズン中にツインズと2度対戦している。ツインズとの2度の対戦で1度は勝利を挙げたものの、合計10イニングで9四球を与えて7失点と相性は良くなかった。

そして、前述のスウィング率とボール球スウィング率において、レギュラーシーズン中のそれぞれワースト2位とワースト1位は6月のツインズとの対戦で記録されたものだ。

そのときもツインズ打線はボールゾーンのスプリッターに対してわずか5回しかスウィングを仕掛けず、これはゴーズマンのシーズンワーストの数字となっている。割合で見ても、ボール球スウィング率はわずか19.2%に過ぎなかった。(『ファングラフス』を参照すれば、フアン・ソトの今年のボール球スウィング率が20%だったため、ツインズ打線は見極めが難しいゴーズマンのスプリッターに対して、ソト並みの選球眼を発揮しているとも言える)

シーズン全体で見ても、ゴーズマンのスプリッターに対するツインズ打線のボール球スウィング率は24.5%と、他の29チームの中で最高の数字をマークしている。

しかし、奇妙なことにツインズ打線はスプリッターに対してチーム打率.147と、メジャーワースト2位の数字を残している。いわば“メジャーで最もスプリッターに弱い打線”でもあるのだ。それがゴーズマンという球界最高のスプリッターの使い手をものともしていないのは何とも不思議なことだ。

ゴーズマンとしては自身のスプリッターが見切られるのは不測の事態だったかもしれないが、今季の2度の対戦を踏まえれば、裏をかく配球もできたはずだ。しかし、悔やんでも遅い。

ツインズ打線はまたしても魔球を攻略し、今度は21年ぶりのプレーオフのシリーズ突破に王手をかけている。

注)データは『baseball savant』参照

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