“猛烈な残暑”が普通の時代に 「日本は四季から二季へ」と気象専門家 史上最も暑い9月 牡蠣の生育に影響も 

牡蠣の生育にも異変… 「まだ泳げるくらい海がぬくい」

残暑が厳しくいつまでたっても夏が終わらない印象だった今年の9月。気象庁は西日本や東日本では「観測史上最も暑い9月だった」と発表しました。ただこれが当たり前の時代になる可能性があると気象の専門家は指摘します。

広島を代表する冬の味覚である牡蠣。東広島市安芸津町にある島村水産では、10月1日から養殖している牡蠣の水揚げを始めました。ただ今年はある心配を抱えながらの作業となりました。

島村水産 島村広司さん:
「例年よりもだいぶ小ぶりなんで、これがもうちょっと大きくなってくれるかが心配です。」

今年は全体的に牡蠣の身が “小ぶり”だというのです。島村さんはその原因の一つとして感じているのが、例年よりも高い海水温の影響です。

島村水産 島村広司さん:
「今まで9月から10月に、こんなに暑かったのは記憶にないです。素人の感覚では、海水温もまだだいぶぬくい。泳げるのではないかというくらい、この時期でも。牡蠣にとってはいい状況ではないと思う。」

広島県周辺の瀬戸内海の8月・9月の海水温は、平年より1℃以上も高くなっています。また、日本周辺の海では海水温が高い状況が続いています。特に9月の海水温は記録的に高く、この先もしばらく平年より高い状況が続くと見られています。

この高い海水温は、この夏の猛暑と大きく関係していると気象の専門家は指摘します。

史上“最も暑い”9月 要因は「高い海水温」と「偏西風の蛇行」

三重大学大学院生物資源学研究科 立花義裕 教授(気象学)
「今年は6~9月の4か月間、暑いのが続いているが、日本周辺の海水温が異常に高い。おそらく観測史上最も高いと思う。猛暑の影響で海の温度があたためられているが、そのあたたかい水温が日本のまわりにへばりついているので、海から吹く風は熱くなって、かつジメジメしている。猛暑の余韻で海水温が高いので9月も暑いというのが一つ目の原因」

今年は9月に入ってもなかなかおさまらなかった猛暑…。広島県内では各地で9月の平均気温が最も高い記録を更新しました。

広島市中区では9月の月間平均気温は27.2℃で平年より+2.5℃も高く、観測記録が残る過去144年間で断トツに高くなりました。また、9月に初めて気温が37℃台に達したほか、最低気温が25℃以上の日数も11日と最も多い記録にも並んでいます。

立花義裕 教授(気象学):
「この9月の猛暑のもう一つの要因は、大気側の話をすると、地球の中緯度の上空を吹いている偏西風の流れが近年は異常で、特に今年は日本付近で偏西風が北へと迂回することが多い。
偏西風は日本の南の『暖かい空気』と、北の『冷たい空気』の境目に吹くので、境目が北へ行くということは日本はずっと暖かい空気に覆われている。こういう状態が6~9月で微妙に位置は変わるけれどずっと続いている。
この大気の要因と海水温が高い要因が複合的に絡まって9月が観測史上最も暑くなったと思っている。」

気象庁は「今年は1946年の統計開始以降、 9月として西日本や東日本では1位の記録的な高温だった」と発表しましたが、立花教授はこうした厳しい残暑は、今後は当たり前になるだろうと予測しています。

2010年ごろを境に北半球の気候が変わった 日本は猛暑が多発

立花義裕 教授(気象学):
「もう今年のようなことが起きるのが普通になりつつある。このような異常が起こることが2010年以降、当たり前になりつつあるので、今年のようなことがこれから普通になる。そういう意味では、異常気象が普通になる時代。『ニューノーマル化する異常気象』と僕は呼んでいる。」

2010年以降、日本では毎年のように猛暑となっていますが、これについて立花教授は、地球温暖化によって北半球全体の気候が変わったことで、日本付近では偏西風が北に大きく蛇行したり、高気圧が強まりやすくなったりして、「猛暑」が頻繁に起こるようになったためと考えています。

立花義裕 教授(気象学):
「偏西風が激しく蛇行する現象は2010年以降に急に増えているが、これには地球の温暖化、特に北極の温暖化が影響していると考えている。
偏西風は北極と赤道の温度差が大きいと速くて、温度差が小さいと遅くなる。なので北極が温暖化して偏西風は遅くなっている。遅いと偏西風はフラフラしてまっすぐ流れずに蛇行しやすくなる。
まさに近年の猛暑は地球の温暖化に伴う偏西風の激しい蛇行と断言してもいい。」

「夏が長くなって冬はちゃんと寒くなる。そういう意味では秋が縮む。季節は夏が長くて、秋と春が短くて、冬は普通にある、という感じなので、季節が4つから2つになったのかもしれない。
今年はあまりにも異常だったのかもしれないが、もうこれが未来の普通になると思う。そういう意味では早く気候変動に適応する必要がある。農業も水産業も水温や気温の変化に適応した作物や漁業に変えていく必要がある。」

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