【弁護士に聞いた】ネット予約のホテル “1週間前”でも「キャンセル料100%」に感じる理不尽… 泣き寝入りするしかない?

手軽なネット予約にはその分リスクも(Sunrising / PIXTA)

新型コロナウイルス感染拡大に伴う制限が解かれ、徐々に消費者の旅行意欲が盛り返しつつある。そうした中、2022年度に全国の消費者センターに寄せられた相談内容によれば、インターネットで予約した旅行に関する相談が前年比で約2倍に増加したという。その背景を探りつつ、消費者問題に詳しい海嶋文章弁護士に、ネットでの旅行の予約における注意点や対策を聞いたーー。

海外旅行のネット予約トラブルが急増

JTB総合研究所が、9月29日に発売開始した「JTB海外旅行レポート2023 日本市場における海外旅行のすべて」によれば、2022年の年間海外旅行者数は277万人で、前年比で大幅に増加。2000万人を突破したコロナ前の2019年には遠く及ばない(13.9%)ものの、ピタリと止まっていた海外旅行への機運はようやく上に向きつつある。

とはいえ、円安、原材料費等の高騰により、財布のひもは固く、予算はできるだけ抑えたい意向が強い。同研究所の調査(2023年3月実施、n=959)でも、「費用が高いと感じ計画を変更した」が38.1%で最も多く、その結果「同じ旅行先で、安くいける日程を探した」が36.9%におよび、旅行マインドの高まりの一方で、計画立案に苦心している様子がにじむ。

それだけに、消費者は予約前後のトラブルによりナーバスになっているようだ。国民生活センターへの相談事例では、<航空券の申込内容を訂正したいが「キャンセルして取り直す必要がある。キャンセル分の航空券の代金は返金しない」と言われた><宿泊予約をキャンセルしたところ、宿泊予定日の1週間前に申し出たにもかかわらず、全額のキャンセル料がかかるといわれた>など、仕方がない側面も否めないが、やや気の毒な事例が目立った。

消費者トラブルに詳しい弁護士に注意点を聞いた

実際のところ、予約した当人の確認不足があるものの、厳し過ぎる印象もぬぐえない…。物価高、給与据え置きで家計が厳しいご時世でもあり、できるだけ損をせず、かつお得に旅行がしたいーーなんとかできないものなのか、消費者トラブルに詳しい海嶋弁護士にうかがった。

──対面でなく、インターネットで旅行の予約をする場合の基本的な注意点を教えてください。

海嶋弁護士:ネット予約は、キャッシュレス決済が可能でとても便利です。一方で、必ず約款や規約を確認することが必要です。約款や規約は、定型約款(民法第548条の2以下)としてルール化されて、民法でルール化されています。 例えばネット予約の場合、約款や規約が公開されていれば、原則として、約款や規約の内容がそのまま契約の内容になりますので、必ず確認が必要です。それを怠ってしまうと、その後の返金交渉などでも非常に不利になってしまいます。

──例えば1週前のキャンセルでも「100%のキャンセル料」。あまりに厳しい気がします。契約時に、どこかに記載さえていたのなら泣き寝入りするしかないのでしょうか。

海嶋弁護士:まず問題は、定型約款が企業側で一方的に定められたもので、個別交渉による修正が不可能であることです。 定型約款では、取引通念に照らして、相手方(この場合は消費者の側)の利益を一方的に害すると認められる場合、契約内容になっていないものとみなされます(民法第548条の2第2項)。 また、消費者契約法第10条でも、同様に、信義則に反して消費者の側を一方的に害するものは無効とされています。

──あまりに理不尽な内容であれば、異議申し立てが認められる可能性もあるということですね。

海嶋弁護士:はい。ただし、どちらによる場合でも、消費者側を一方的に害し、その程度が著しいことを証明する必要があります。

──旅行予約サイトでホテルと航空券を同時に予約してその後キャンセル。ホテルは無料だったが、航空券はキャンセル料がかかった。この場合、実質、旅行に行けないわけなので、法的に予約サイトに何らかの責任を問うことはできるのでしょうか。

海嶋弁護士:予約サイトを介した場合でも、ホテルや航空券の契約は、消費者と予約サイト運営会社との間に発生するわけではないので、原則として、予約サイト運営会社に法的責任を問うことは困難です。 実際に、宿泊予約を仲介するサイト運営会社の責任が問題となったケースでは、予約サイトの義務は、予約の伝達と予約確認書メールの送信に尽きるとして、責任が否定されています(東京地判令和元年9月5日判決)。 もっとも、予約サイトで、消費者に対し、キャンセル料の取り扱いについて何らか表示していた場合は、例外的に法的責任が発生する場合があるでしょう。

──実際にネットでの旅行予約でトラブルに遭った場合、どんな対応策があるのでしょうか。

海嶋弁護士:国民生活センターへ相談することもひとつ考えられます。消費者紛争の窓口となっていますので、より一般的な方法といえるでしょう。 もっとも、具体的な返金請求を行うとなった場合は、定型約款や消費者契約法に違反することを主張することになり、個別判断が必要となります。専門知識が必要になるので、法律の専門家である弁護士に相談するのがよいでしょう。

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