【連載コラム】第32回:21世紀唯一の三冠王カブレラ、200勝投手ウェインライト 引退するレジェンドたち

写真:大歓声に包まれながらキャリアを閉じたカブレラ

日本時間10月2日にMLBの2023年レギュラーシーズンが終了しました。今季限りでの現役引退をすでに表明していたミゲル・カブレラ(タイガース)とアダム・ウェインライト(カージナルス)は現役最後のシーズンを終えたことになります。

カブレラは2003年6月にデビューし、マーリンズで5年間、タイガースで16年間プレー。4度の首位打者を筆頭に、通算3174安打、627二塁打、511本塁打、1881打点など輝かしい実績を残し、2012年には21世紀唯一となる三冠王に輝きました。翌2013年は打率、出塁率、長打率、OPSでいずれもメジャートップの数字を残し、2年連続でMVPを受賞。2017年以降の7年間は全盛期のような活躍をすることはできませんでしたが、通算打率.306、OPS.900という数字は「見事」の一言に尽きます。現役ラストゲームでは2年ぶりに一塁の守備に就き、大歓声に包まれながらフィールドを後にしたカブレラ。試合後には「故障が続いていたからフィールドに戻れるとは思っていなかった。1アウトだけだったけれど、一塁の守備に就くことができて、また1つ夢がかなったよ」と感激した様子で話していました。

ウェインライトは2005年9月にデビューし、カージナルス一筋で18シーズンのメジャー生活を過ごしました。歴代最多の通算328試合で先発バッテリーを組んだ「相棒」のヤディアー・モリーナが昨季限りで引退した影響もあったのか、今季は精彩を欠くパフォーマンスが続きましたが、現役最終登板となった日本時間9月19日のブリュワーズ戦で7回4安打無失点の好投を見せ、通算200勝のマイルストーンに到達。シーズンの最終カードだった本拠地ブッシュ・スタジアムでのレッズ3連戦では、代打で2度登場して地元ファンを大いに沸かせました。ジョージア州出身で、地元球団のブレーブスからドラフト1巡目指名を受けてプロ入りしたウェインライトですが、デビュー前にカージナルスへトレードされたため、メジャー昇格後はカージナルス一筋。引退セレモニーにはモリーナとアルバート・プホルスの両レジェンドも駆けつけ、「現役最後の3日間のことは一生忘れないと思う」と充実した表情で、長いキャリアに終止符を打ちました。

この2人以外にも今季限りでユニフォームを脱ぐ可能性がある名選手が複数います。まずは通算225勝を挙げている名投手ザック・グレインキー(ロイヤルズ)。ドジャースやアストロズを経て、昨季からプロ入り時の球団であるロイヤルズに戻ってプレーしているグレインキーは、シーズン最終日の今季最終登板でヤンキースを相手に5回4安打1失点の好投を見せ、ようやく今季2勝目をマーク。30試合で2勝15敗、防御率5.06と非常に苦しいシーズンとなりましたが、自身の去就については「まだ分からない」と語るにとどめ、明言を避けています。通算3000奪三振のマイルストーンまであと21に迫っていますが、どのような決断を下すのか注目されます。

次は抜群の選球眼を武器に球界を代表する好打者として活躍してきたジョーイ・ボットー(レッズ)。今季は故障の影響もあり、わずか65試合にしか出場できませんでしたが、それでも14本塁打、OPS.747と存在感を示しました。現役ラストゲームとなる可能性があったシーズン最終戦では、初回の第1打席で三振に倒れたあと、一塁の守備へ向かう際に球審に暴言を吐いて退場に。「試合を見てくれているファンのために、常に試合を通してプレーしたいと思っているが、今日はそれができなかった。今日がシーズン最終日だったのは不幸だ」と残念そうに話したボットー。自身の去就については「まだ答えを出していない」としており、「引退すると決めたときには必ずお伝えすると約束するよ」と語って2023年シーズンを終えました。

ジャイアンツ一筋で13年間のメジャー生活を過ごし、2度の世界一を経験したブランドン・クロフォードも今季限りでの引退が噂される1人です。今季は94試合に出場して打率.194、7本塁打、38打点、OPS.587という自己ワーストの成績。自慢の遊撃守備も衰えが顕著で、守備防御点は自己ワーストの-14に終わりました。「答えを出すまでにはもう少し時間がかかると思う」と語ったクロフォード。「他球団からどんなオファーがあるか見てみようと思う。そこで状況を正しく判断し、正しい答えを出したい」と今季が現役ラストイヤーになる可能性を否定はしませんでした。

今後は、こうした一時代を築いた名選手たちに代わって、フリオ・ロドリゲス(マリナーズ)、アドリー・ラッチマン(オリオールズ)、ボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)、コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)、エリー・デラクルーズ(レッズ)といった新世代の若きスター選手たちが球界を牽引していくことになります。このようにして、これまでの100年以上がそうであったように、これからもMLBの歴史は紡がれていくのです。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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