台湾ドラマファンにはおなじみの「金鐘奨」(ゴールデン・ベル・アワード/GBA)ですが、授賞式まで一カ月を切った今、改めてどんな賞なのかを整理して、おさらいしていきたいと思います。
金鐘奨の概要ざっくり
正式名称は「廣播電視金鐘奨」(ラジオテレビ金鐘奨)。一年に一度(通常10月)、ラジオ業界およびテレビ業界のさまざまな分野に対して授与される賞で、映画の金馬奨(ゴールデン・ホース・アワード/TGHFF)、音楽の金曲奨(ゴールデン・メロディ・アワード/GMA)とともに「三金」と称される、台湾で最も権威あるエンターテインメント賞の一つです。歴史は古く、その設立は1965年。当時の行政院新聞局が立ち上げ、2012年以降は文化部影視及流行音楽産業局(映像・音楽産業振興局)によって開催されています。
金鐘奨の歴史
一般的に電視金鐘奨(テレビ金鐘奨)の注目度が高いため、日本では「台湾のエミー賞」とも言われますが、テレビ黎明期の設立当初は台湾テレビ(台湾電視/TTV)1局しかなかったこともあり、主にラジオ放送業界への表彰を目的としたものでした。やがて69年に中国テレビ(中視/CTV)、71年に中華テレビ(華視/CTS)が開局されたことでテレビ業界も徐々に盛り上がり、1980年代末から90 年代にかけケーブルテレビ局が激増すると、電視金鐘奨のスケールは廣播金鐘奨(ラジオ金鐘奨)をしのぐ勢いで大きくなっていきました。
やがてテレビ全盛期を経て授与数が増えると、93年からラジオとテレビそれぞれに日を分けて授賞式が行われるようになります。それでも電視金鐘奨だけで40を超える賞があるため、授賞式は深夜まで続くのが恒例で、現場の登壇者やスタッフ・取材陣はもちろん、視聴者にとっても中々に体力と気力が必要な長丁場イベントでした。幸いにも昨年から、電視金鐘奨の授賞式がさらにドラマ部門とそれ以外に分けられ、各授賞式の時間が短くなったので、視聴者にとってはより見やすくなったといえるでしょう。
金鐘奨の参加資格
金曲奬と金馬奬が中華圏全体を対象としており、中国、シンガポール、マレーシア、香港などの華語圏からも出品できるのに対し、金鐘奬だけは授与の対象者が「中華民国の法律に則って設立された放送局、制作会社およびそのスタッフ」という制約があります。たとえ台湾のテレビ局で放送されても海外の番組は参加資格がないため、金鐘奨は最も台湾らしいカラーが出やすい、台湾ならではの賞といえるのではないでしょうか。
金鐘奨の審査基準とは?
審査基準は、「クリエイティビティー」、「テーマの共感性と吸引力」、「テレビ業界の技術、番組制作やマーケットへの先駆的な貢献」など多岐にわたります。そのため、筆者を含めた一般視聴者の予想とは必ずしも一致しないことが多いですが、2022年から視聴者を対象にした「人気投票イベント」が行われるようになりました。期間中、「バラエティー番組予選リスト」と「ドラマ番組予選リスト」から一人につき5作品に投票でき、その得票数によって、非公式ではあるもののノミネート5作品と最優秀人気ドラマ賞が選出されます。ちなみに、昨年初の同賞に輝いたのは「火神の涙」でした。
Text:二瓶里美