「いま僕はココにいます」Vol.176 スコットランド編

セントアンドリュースにやってきました

人は彼のことを“旅人ゴルファー”と呼ぶ。川村昌弘・30歳。2012年のプロデビューから活躍の場を海の向こうに求め、キャリアで足を運んだ国と地域の数は実に70に到達した。キャディバッグとバックパックで世界を飛び回る渡り鳥の経路を追っていこう。

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プロゴルファーの川村昌弘です。
いま僕はダンディーにいます。

今週のDPワールドツアー(欧州男子ツアー)は「アルフレッド・ダンヒルリンクス選手権」。スコットランドの名門、セントアンドリュース オールドコース、カーヌティ、キングスバーンズの3コースをプレーする試合です。

おめでとう!シャンパンを飲む久常涼選手。パリの会場でDPワールドツアー初優勝をお祝いしました

さて! 2週前の「カズーオープンdeフランス」で久常涼選手がツアー初優勝を飾りました。21歳の彼にとってはプロ転向してから初めてのタイトルでもあります。

この大会で予選落ちしていた僕は週末までコース近くのレンタルハウスに滞在していました。最終日は比嘉一貴選手も優勝を狙える位置でスタートしたのですが、前半は2人とも苦戦。難しいかな…と思い、しばらくスマートフォンから目を離していたんです。

「誰が勝つんだろう」。リーダーボードを改めて確認したのは試合が終わる直前。すると、“ツネ”がトップでホールアウトしそうではありませんか! 慌ててコースまで車で走って駆け付けました。「こういうときはシャンパンだ!」。勝負が決まった時にお祝いするため、コースに隣接しているホテルのバーで急いでボトルを購入。準備を整え、その瞬間を待っていました。

ところが…、うーん。久常選手は最終組の前でプレーし、優勝の瞬間はグリーンにいなかったためシャンパンをかけに行くタイミングが分からない…。表彰式の前? それとも終わってから? そもそも僕、“パーティーピーポー”じゃないんです。18番グリーン脇でボトルを抱えてセレモニーが終わるのを眺めたまま、周りのギャラリーの方に「日本人か? やったな!」なんて声をかけられつつ、時間だけが過ぎて行ったのです…。シャンパンは結局、ぶちまけることなく、コースのクラブハウスで一緒にいただきました。

シャンパンファイトのつもりだったのに

これまでもご紹介した通り、ツネは日本ツアーで勝つ前に、プロ2年目の終わりに海を渡ってきました。若さと勢いがあるうちに、ハードルを飛び越えられて本当に良かった。ひとつひとつ段階を踏むことも大切ですが、目指すものに向かって「どんどん“飛び級”をしていこう」と話したこともありました。100年以上の歴史があるフランスのナショナルオープンでの優勝はまさに華麗な飛び級。輝かしい、価値ある1勝です。

記念すべき瞬間に駆け付けられて、僕もうれしくなりました。とはいえ、5年前の自分だったら同じ行動ができるかというと、“ムリだった”気がします。仲の良い選手同士とはいえ、僕たちはプロゴルファー。同じ試合に出て、負けて喜べるはずがありません。ただ今回は、自分のことを慕ってくれる後輩に、おめでとうと心から思えました。僕自身も精神的に成長したのでしょうか。もちろん胸には悔しい気持ちも湧いてきて、自分も頑張りたいと刺激をもらった良い一日だったと思います。

フランスからイギリスへはレンタカーを積んだフェリーで移動

パリでの試合を終えて、ダンディーまではレンタカーで1週間かけてやってきました。ドーバー海峡をフェリーで渡り、イングランドのバーミンガム、ニューキャッスル、スコットランドに入ってエジンバラにも立ち寄るロングドライブ。リフレッシュ完了です。

ニューキャッスルの美しい町並み

会場近くは試合前、しっかり“スコットランド・ウェザー”。雨が降っては止み、を繰り返しています。事前に3コースをチェック。開幕前日はセントアンドリュースで「こんなにボールが流されるか」と思うほどの強い風の中を回ってきました。欧州ツアーもいよいよ終盤。頼もしい後輩たちからもパワーをもらって、また頑張ります。

スコットランドのエジンバラ城
スコットランドに到着
バーミンガムで民泊。寝室に草間彌生さんの絵画がありました。僕が日本人と知ってかな?

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