記憶と言葉を失った男 23年ぶりにロシアからキルギスの村に帰郷 「父は憶えている」予告

2023年12月1日より劇場公開される、第36回東京国際映画祭コンペティション部門でワールドプレミア上映された、キルギスのアクタン・アリム・クバト監督最新作「父は憶えている」の、予告編が公開された。

予告編では、記憶と言葉を失いながらも、23年ぶりにキルギスの村に帰ってきたザールクの姿と、帰郷を喜びながらも動揺する家族や村人の姿が映し出される。息子は、父の記憶を呼び覚ますために家族のアルバムを見せる。そこにはザールクと妻ウムスナイが並んで映る古いモノクロ写真があったが、家にウムスナイの姿はなかった。孫娘や村人との交流や穏やかな村の暮らしなど日々の生活が、村の権力者による圧力や時代の流れに逆らえず変わっていく様子が描き出される一方、家族を結びつける懐かしい歌声も流れ、最後は木立の中で空を見上げるザールクの表情で終わる。

「父は憶えている」は、変わりゆく世界にあらがい、伝統と文化を守ろうとする家族の姿を映し出した作品。23年前にロシアへと出稼ぎに行ったきり、行方がわからなかったザールクが、キルギスの村に帰ってくる。だが妻ウムスナイの姿はなく、記憶と言葉を失ったザールクの姿に家族や村人たちは動揺する。心配する家族や村人たちをよそに、ザールクは村のあふれるゴミを黙々と片付ける。無邪気に慕ってくる孫、村人とのぎこちない交流、穏やかな村の暮らし。そんな中、村の権力者による圧力や、近代化の波にのまれ変わっていく故郷の姿が、否応なくザールクに迫ってくる。

母国のインターネットニュースで見つけた実話を元にした本作の監督は、キルギスを代表するアクタン・アリム・クバト。自ら主演も担っている。第96回アカデミー賞国際長編映画賞のキルギス代表に選出されている。

【作品情報】
父は憶えている
2023年12月1日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
配給:ビターズ・エンド
©Kyrgyzfilm, Oy Art, Bitters End, Volya Films, Mandra Films

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