スーパーや病院で働くぬいぐるみの写真、集め続けるのなぜ?

2022年1月に突如出現したX(旧ツイッター)アカウント「はたらくぬいぐるみbot」(@hatarakudoll)をご存知だろうか? その内容は、スーパーマーケットの一角や病院の待合室など、街中に佇むぬいぐるみの写真をユーザーから募り、「はたらくぬいぐるみ」として紹介するというものだ。

「はたらくぬいぐるみbot」@hatarakudollさんがハマるきっかけとなった働くピカチュウ

そんな「はたらくぬいぐるみ」たちを、ユーモアたっぷりに、ときに哀愁ただよう文章で紹介する同アカウントはじわじわと人気となり、現在14.2万ものフォロワーがぬいぐるみたちを見守っている。

筆者も見るたびに癒やしをもらっているが、誕生のきっかけや画像の選定基準など、なにかと謎は多い。そこで、アカウントを運営する関西在住のおにんぎょう村公式【X】(@oningyomura)さんにくわしく話を訊いてみた。

きっかけは病院の待合室で働いていた「ピカチュウ」

──ほかにはないコンセプトで、投稿を見るたび癒やされています。そもそも、おにんぎょう村公式【X】さんが「はたらくぬいぐるみ」たちに注目するようになったのは、どういったきっかけがあったのでしょうか?

以前、軽い手術を受けることになったのですが、手術が近づくにつれ不安な気持ちになってきて・・・。そんなとき、待合室にお医者さん姿のピカチュウがいたんです。思わず写真を撮ってしまったんですが、当時すごく安心したのを覚えています。

そしてそのとき、世のなかには誰かを元気付けるために働いている「ぬいぐるみ」がもっといるのではないかと感じたんです。「そいつらをもっと見たい」と思い、その日にbotを作りました。そのとき撮った写真は、botのプロフィール画像にしています。

──実体験から始まったbotだったんですね。写真はSNSのユーザーから募っているそうですが、どれくらいのぬいぐるみ写真が送られてくるんでしょうか。

毎日、20〜30通ぐらいのDMで画像が届きます。同じ人がまとめて何枚も送ってくれたりもしますし、ありがたいです!

──毎日たくさん写真が届くと選ぶのも大変だと思うのですが、選定基準などはありますか?

ぬいぐるみの周りに人が映っていないことや、ぬいぐるみ写りが良いことなどで判断しています。引き気味の写真だと、どこにいるのかわかりやすくていいですね。あとは、直感で決めてます。

──なるほど、ぬいぐるみたちの「映え」にも注目しているんですね。送られてくるぬいぐるみの写真に、なにか傾向などあったりしますか?

これまで見たなかだと、スーパーマーケットの売り場にいるキウイ(編集部注:『ゼスプリキウイ』のマスコットキャラクター・キウイブラザーズ)は、ダントツに多いですね。

──確かによく見ますね。投稿では「肉団子になりすます大きめのおはぎ(意思なし)」や「洗濯されて休憩中のアンパンマンたち」など、写真に添えている一言のおかげで、ぬいぐるみの可愛らしさや面白さが引き出されていると感じます。文章面で、こだわっているポイントはありますか?

文章も、写真選びと同じでほとんど直感で書いています。写真を見たまま、投稿していますね。

──こだわりでいうと、注意事項に「正式名称、正式な商品名で紹介しない場合があります」と書いてあるのが気になるのですが、これはどういった意味なんでしょうか?

以前、あるぬいぐるみのキャラクターを正式名称ではない呼び方で投稿した際、訂正のリプライが届いたことがあったんです。でもツイートをする際、自分としては正式名称で呼ばない方がいいな、と感じる場合もあって。なので、注意事項のひとつとして掲載しています。

──おにんぎょう村公式【X】さんのぬいぐるみに対する向き合い方が伝わってきます。最後に「はたらくぬいぐるみ」に感じている魅力を教えてください。

自分自身、ぬいぐるみを好きなのが大前提なのですが、ほかの人がぬいぐるみを大事にしたり、「ひと」のように扱って着飾ったりしているのを見るのも好きなんです。

気難しそうに見える店員さんが、朝の開店前にぬいぐるみを店先に置いたり、マスクをつけさせてあげたりしてるのかな? なんて考えると、アガりますね。

見ているうちに、自然とやさしい気持ちに包まれていく「はたらくぬいぐるみbot」には、運営者によるぬいぐるみへの愛情や思い入れが詰まっていた。懸命に働いている(ように見える)ぬいぐるみたちを見守りたい人は、ぜひチェックしてみてほしい。

取材・文/つちだ四郎

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