「やっとこの時がきた」播磨の秋祭り、9割がコロナ前規模に 1割は縮小継続「ブランク大きい」の声も

4年ぶりの練り合わせに向け、新調した屋台を担ぐ氏子ら=姫路市香寺町田野

 太鼓の音と威勢の良いかけ声、豪華絢爛(けんらん)な屋台に交じり色とりどりのシデ棒が揺れる-。兵庫随一の祭りどころ播磨に秋祭りの季節がやってきた。姫路・西播磨5市6町では今年、祭りのある約250の神社のうち約9割が祭典行事の規模を新型コロナ禍前に戻す。一方、約1割は縮小を継続。少子化に伴う人手不足などが要因で、祭りをどう継承していくか、氏子らが頭を悩ませている。(井上 駿、森下陽介)

 「ヨーイヤサー」「ドン、ドン、ドン」。9月下旬、「灘のけんか祭り」(10月14、15日)で知られる松原八幡神社(姫路市白浜町)の氏子地区の一つ、宇佐崎地区。宵闇に包まれた住宅街では、屋台蔵から煌々(こうこう)と光が漏れ、男たちのかけ声と太鼓の音が響く。

 「(同神社の秋季例大祭は)一年で最も大事な2日間。毎日の練習も真剣勝負です」。晴れの日に向けて頭を丸めたという会社員の男性(22)は、そう言って神輿(みこし)屋根の屋台に乗り込み、力強く太鼓を打ち鳴らした。

 例年、2日間で十数万人が訪れる灘のけんか祭り。昨年、コロナ禍による中断を経て3年ぶりに本格開催された。名物の「神輿合わせ」がある本宮が土曜日だったこともあり、お旅山などの練り場周辺には大勢の観衆が殺到した。

 今年は14、15日が土日と重なるため、それ以上の人出が見込まれる。年番を務める木場地区の戸崎寿人総代(62)は「けがや事故が起きないよう心がけたい」と気を引き締めた。

 今月8日にある同市香寺町香呂地区の秋祭りでは、「屋台大集合」と銘打ち、4年ぶりに屋台の練り合わせが披露される。

 「やっとこの時がきた」。参加する田野地区の若手の氏子でつくる「清秋會(かい)」団長、丹羽翼さん(29)は本番を心待ちにする。

 同地区では、祭り好きの10~30代前半の氏子が増えたため、20年に一回り大きな屋台に新調した。だが、コロナ禍の影響などで一度も満足に披露することができなかった。

 丹羽さんは「お披露目まで4年もかかった。田野の自慢の屋台を見てもらいたい」と気合を込めた。

### ■進む少子化 伝統継承に課題も

 神戸新聞社が、姫路・西播磨にある神社に秋祭りの予定を確認したところ、昨年は約半数がコロナ禍を理由に神事のみの開催としていたが、今年はこのうち100社近くが4年ぶりに屋台練りや獅子舞などを復活させると回答した。

 一方、「神事のみ」と答えた神社が約20社あった。山間部に位置する小規模な神社が多く、理由に小中学生ら若手の減少や祭典行事の継承ができていないことなどを挙げた。

 今年も子ども屋台の巡行を見送ることにした姫路市夢前町の大歳神社。ある氏子は「3年のブランクは大きい。少子化も進み、練り歩きを再開しようというエネルギーが地域に残っていない」と肩を落とした。

 一方で、祭典行事や運営手法を持続可能な形に改める地域も出てきた。姫路市飾磨区の早川神社も4年ぶりにコロナ禍前の規模に戻すが、祭りの運営を自治会主導に見直した。従来は、小学生の保護者でつくる子ども会が主体だったが、子育て世代の負担軽減を図ることにした。

 また小学校低学年から祭りに加われるよう、小型のたるみこしも導入した。

 神社と自治会の役員を兼務する長田秀人さん(73)は「親の負担を減らし、祭りに参加できるハードルを下げた。地域の祭りを次代に引き継ぐため、子どもから高齢者までが意欲的に参加できる形を模索していきたい」と話していた。

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