指がしびれ「手根管症候群」と診断、手術したら手の感覚なくなった…専門医に聞く悪化の原因とは

 左手の3本の指がしびれ、手根管症候群と診断されて手術をしましたが、手術前より悪くなりました。手の感覚がなくなり、物をつかむこともできず、中指は曲がって伸びません。再手術して症状が改善する可能性はあるのでしょうか。(福井県福井市、80代男性)

【お答えします】山岸淳嗣・福井大学医学部整形外科助教

手根管症候群ってどんな症状?

 まずは手根管症候群について説明します。手首の手のひら側に、神経と指を曲げる腱(けん)が通る「手根管」というトンネルがあります。さまざまな要因で手根管が狭くなり、手根管を通る正中神経が圧迫されることで、指にしびれや痛みが生じます。初期には人さし指、中指がしびれるのみですが、進行すると親指や薬指にも症状が出現します。

 正中神経の圧迫が強くなると、鎮痛薬の内服が効かないほどの痛みが続いたり、親指の付け根の筋肉がやせてきます。筋肉がやせることで筋力が低下し、箸を使うことやボタンかけなどの細かい動作がしづらくなります。これらの症状を認めるときには、自然に治らないことが多く、手術が必要になります。

 手術は正中神経の手のひら側にある厚くなった靭帯を切開し、正中神経の圧迫を取り除きます。またガングリオンというゼリー状の物質の詰まった腫瘤(しゅりゅう)が神経を圧迫している場合はこの腫瘤も摘出します。

手術して悪化、なぜ?考えられる可能性と再手術の必要性

 どの部位の手術でも言えることですが、切開・切除をした部位は少なからず癒着する可能性があります。神経は癒着の影響を受けやすく、いったんよくなった症状が再び出現し、増悪することもあります。今回の相談者も、癒着により正中神経が再度圧迫されて、しびれなどの症状が強くなっている可能性があります。

 また、手根管症候群の手術では靭帯を切開するため、手術の後には、指を曲げる腱の動く部位が変化すると考えられます。その影響で「ばね指」を発症しやすくなると言われており、今回の相談者もばね指を発症したために中指が伸びにくいと考えられます。

 これらが原因とすると、手術をせずに症状が軽くなる可能性は低いと考えられます。正中神経を周囲の癒着・瘢痕(傷痕)から剥がすなどの再手術が望ましい状態です。中指が伸びない状態が続くと指の関節が硬くなってしまうこともあります。ばね指に対する手術も必要な状態かどうか、整形外科を受診し診察を受けてください。

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