【どうする家康】北条家の最期に異論、とんでもない糸口とは

松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。9月24日放送の第37回『さらば三河家臣団』では、天下一統の総仕上げ的な存在となった北条家の思わぬ抵抗の理由と、豊臣家衰退のきっかけとなる朝鮮出兵に至る秀吉の演技に、SNSはいろんな意味で震えあがった(以下、ネタバレあり)。

『どうする家康』第37回より、降伏し家康に夢を語る北条氏政(駿河太郎) (C)NHK

■ どうする家康、いまだ生きる瀬名の構想

豊臣秀吉(ムロツヨシ)の小田原攻めに敗北した北条家4代目・氏政(駿河太郎)と対面した家康。戦を長引かせた訳を聞くと氏政は、かつて家康の正室・瀬名(有村架純)が唱えた「戦のない国」の構想を今川氏真(溝端淳平)から聞き、それを夢見て秀吉に抵抗したと告白。この後関東を治める家康に「我が民をよろしく頼みまする」と頼んだのち、切腹した。

そうして秀吉の天下一統は成し遂げられたが、その成功と引き換えたように、弟・秀長(佐藤隆太)が、そして茶々(北川景子)との間に生まれた息子が逝去。秀吉は笑いながら「次は、なにを手に入れようかのう?」と不気味につぶやく。しばらくして、江戸の街の開拓に励む家康のもとに、秀吉から「朝鮮を従えて、明国と戦をする」という朱印状が届き・・・。

■ 北条家の最期に、とんでもない糸口

ついに天下一統を成し遂げた豊臣秀吉だが、その最後の難関となったのが、関東一帯を治めていた北条家。いつまでも結論が出ない議論を「小田原評定」と呼ぶなど、小田原城の強固さに頼ってダラダラと戦を続けたあげく、滅亡&切腹という最悪の道をたどった・・・と思われがちな北条家の最期に、思わぬ異論を投げかけたのがこの37回だ。

『どうする家康』第24回より、築山に訪れ、瀬名の理想に賛同する今川氏真(左・溝端淳平)と正室・糸(志田未来) (C)NHK

家康だけでなく、今川氏真夫妻をも動かした、瀬名の「みんながひとつの国になる」というプラン。これがまさか、氏真の妻・糸(志田未来)が氏政の妹というつながりを利用し、氏政までもがそんな世を夢見て、それを阻む秀吉に抵抗していた、という流れにするとは・・・。相手が「糸」だけに、とんでもない糸口を見つけ出したものだ。

SNSでも「くぅぅぅぅう、そこにたどり着くのか」「まさかの瀬名の構想がここで活きるのか!」「そうか糸さんのお兄さんなんか。この瀬名の夢がずっと色んなところに染み入ってるんやな」「氏政殿も夢に連なった者とするのですね」「なんだこの史上最強にカッコいい北条氏政」などの、驚きと称賛の声が相次いだ。

■ タガを外した秀吉、ムロの狂気の演技

そして氏政の予想通り、秀吉は天下一統で生まれた平和の持続ではなく、海外で新たな戦を起こすという方向に。ブレーキ役だった秀長がいなくなったことと、50歳を超えてようやく生まれた我が子を失った喪失感を埋めるという二重の要因によって、完全に欲望のタガを外した秀吉。その合図のような「次は、なにを手に入れようかのう?」の、ムロの狂気の演技には、心底ゾッとされられた人が多かったよう。

『どうする家康』第37回より、家族を失い「次は、なにを手に入れようかのう?」と漏らす秀吉(ムロツヨシ) (C)NHK

実際にSNSでは、「ムロ秀吉安定の老害化」「秀長さん『兄さま、これ以上の欲は、張りなさんなよ』それ直接言ってあげてー!」「秀吉元々やばいのにもう表情が行くとこまで行ったね」「あの信長でさえ孤独と自分が消した者たちの影に蝕まれていたし、今の秀吉の姿を見ると天下を取る過程は良くも悪くも人を変えるなぁ」などの声が。

そして「殿下は絶対正しい。もし間違ってたら自分が止める」と家康に大見得を切ってみせたが、この秀吉の迫力にひるんでしまってる石田三成(中村七之助)にも、「あー、悪いところが出ているぞ三成」「誰か治部に教えてあげて欲しい、間違ったことをしたら止めるのではなく、間違ったことをしないように意見を言うのが忠臣なのだと」など、流れ弾のようにコメントが相次いだ。

徳川家康(左・松本潤)と石田三成(中村七之助)(C)NHK

前々回で三成が出てきたときは、こんなに家康と気が合う三成が、どうやったら関ヶ原で家康と戦うの? と疑問符でいっぱいになったが、この回で実は秀吉に「NO」と言えない弱さが露呈してしまった。秀吉への絶対的な忠誠心と弱さが掛け算となって、やはり史実ルートをたどってしまうことになるのか? とはいえ次回は、2人がバディとなって秀吉を止める展開がありそうなので期待しよう。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。10月8日放送の第38回『唐入り』では、明国を手に入れようとする秀吉が、肥前名護屋城に家康を含めた諸大名を集め、朝鮮と戦を繰り広げる様が描かれる。

文/吉永美和子

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