国家的スキャンダルに巻き込まれていく原子力企業の労働組合代表 「私はモーリーン・カーニー」場面写真

© 2022 Guy Ferrandis - Le Bureau Films

2023年10月20日より劇場公開される、仏総合原子力企業アレバ(現オラノ)社のCFDT(フランス民主労働組合連盟)代表モーリーン・カーニーが、国家的スキャンダルに巻き込まれていく姿を描いた社会派サスペンス映画「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」から、新たな場面写真が公開された。

場面写真では、自身を見張る警官とトランプをしていたり、原子力発電所を視察するモーリーンの姿のほか、モーリーンを疑うブレモン曹長(ピエール・ドゥラドンシャン)や、モーリーンと激しく対立する原子力会社のウルセル社長(イヴァン・アタル)の様子などが収められている。

© 2022 Guy Ferrandis - Le Bureau Films
© 2022 Guy Ferrandis - Le Bureau Films
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「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」は、会社とその未来、そして従業員の雇用を守るため、中国とのハイリスクな技術移転契約の内部告発者となったモーリーンが、自宅で襲われるという肉体的暴力と、それを自作自演だと自白を強要する権力側からの精神的暴力に対し、屈することなく6年間闘い続け、無罪を勝ち取るまでを描いた実話の映画化作。社会や組織における女性、政治と経済の権力構造、労働組合、裁判、原子力発電、中国問題、夫婦の関係などの問題が、モーリーンを軸にサスペンスフルな展開で浮かび上がらせた作品となっている。

世界最大の仏原子力会社の労働組合代表だったモーリーン・カーニーを演じるのはイザベル・ユペール。監督は、イザベル・ユペール主演作品「ゴッドマザー」を手掛けたジャン=ポール・サロメ。脚本は「ローズメイカー 奇跡のバラ」のファデット・ドゥルアール、撮影は「1640日の家族」のジュリアン・ハーシュ、音楽は「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」のブリュノ・クーレが担当している。

一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■風吹ジュン(女優)
どの角度から見ても大人な映画!
眼鏡も衣装とインパクト有する役作り、
その上を行く彼女の演技は事件の真相が全く読めない…
冤罪とはこのように曖昧でミステリーなのか…

■久米宏(フリーアナウンサー)
フランスの原子力企業アレバ社 日本でも名前は知られている
アレバ社労働組合のトップ モーリーン・カーニーは
ある日 数名の覆面姿の男たちから 陵辱的暴行を受ける
自作自演ではないかとの声も上がる中 彼女は静かな生活を続けてゆく
しかし モーリーンは強い人なのだ 負けるわけにはいかないのだ
心の底から驚くのは これが実話だということだ

■☆新感線 主宰/演出家)
イザベル・ユペールは間違いない!
イザベル・ユペール作品にハズレなし!
僕が圧倒的信頼感を持つ、現代フランス映画界・演劇界の至宝、イザベル!
いやあ今回のこの「私はモーリーン・カーニー」も間違いなかった。面白かった。イザベルはフランス労働組合の代表:モーリーンを演じているわけですが、大企業の思惑・政治のエゴに翻弄される彼女の孤独・苦悩・絶望・哀しみ・葛藤・怒りをとても淡々とクールに演じていて、それが実際に起きた事件を描いたこの映画に強烈なリアリティを際立たせていた。暗躍する陰謀渦巻くサスペンス!ホントに映画みたいにスリリングな事件が、近年のヨーロッパで起きていたのかと思うと、現代の国際情勢のなか、どこの国でもありえるだろうなと戦慄し、やりきれなくなる。 いのうえひでのり(劇団

■筒井ともみ(脚本家・作家)
原子力発電の闇。権力によるセクハラ。組合運動トップとしての矜持。すべてを引き受けて、女(モーリーン)は輝くブロンドと紅いルージュの武装でたった独り闘いつづける。だって未来というゴールがある筈なのに、逃げる(ギブアップ)なんてできる?!

金平茂紀(ジャーナリスト)
映画を見終わると同時に溢れ昂るこの感情。
怒りと安堵。でっちあげと真実。会社と組合。「処理水」と「汚染水」。裏切りと友情。
物語の舞台が原子力産業であることの意味を、僕は深く考えさせられた。
イザベル・ユペールの渾身の演技に勇気をもらった。
映画の原題『La Syndicaliste』を『私はモーリーン・カーニー』と翻案した担当者に乾杯!

■浜田敬子(ジャーナリスト)
これは特殊なケースだろうか。
ハラスメントや暴力、差別、不正・・
私たちの日常には理不尽なことで溢れている。
その時に小さくてもいい、
声を上げ続けられるか。
映画を見ながら、ずっと突きつけられていた。

■町山智浩(映画評論家)
原発業界の力でレイプが握り潰され
噓つきにされてしまうヒロイン。
妻を信じ続ける夫に感動するも
関係者の謎の死の連続にゾッとする。
原発も水道業界もヤバいぞ。

■児玉美月(映画文筆家)
性暴力を受けた女性が、その直後に医師の前で真紅の口紅を引き直す。
──映画の序盤を描写したこの一文に違和感を覚えた者は、まずその違和感を疑ってほしい。
この映画には、「よい被害者」という言葉が反復される。すでに傷つき疲弊している被害者が、その後さらに「よい被害者」を求められ二次的な暴力を受けてゆく。
わたしたちはこの映画とともに、常態化した構造へ強固なNOを突きつけなければならない。

■月永理絵(ライター・編集者)
「彼女は本当に被害者なのか?」一人の女性に向けられた、荒唐無稽ともいえる疑惑。だが私たちの内にも、疑心はたしかに一瞬入り込む。その恐ろしさ、愚かさを、映画はどこまでも冷ややかに描き出す。

■今 祥枝(ライター・編集者)
女性を“黙らせる”ための屈辱的な暴力に加えて、警察と世間による深刻な二次加害がモーリーン・カーニーに与えた精神的な苦痛は計り知れない。告発に対して、私たちはまず誰の声に耳を傾けるべきなのか? バックラッシュが強まる今だからこそ、原点に立ち戻って考えたくなる映画でした。

■高橋諭冶(映画ライター)
この実録ドラマには、1970年代アメリカのポリティカル・スリラーのような得体の知れない不気味さが渦巻いている。イザベル・ユペールが超然と体現したモーリーン・カーニーの複雑な多面性。そして中盤のある重大な出来事の決定的瞬間を省略した巧みな演出が、映画をいっそう魅惑的に謎めかせている。

【作品情報】
私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?
2023年10月20日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次公開
配給:オンリーハーツ
©2022 le Bureau Films-Heimatfilm GmbH + CO KG-France 2 Cinema

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