【MLB】長打で押し切った伏兵・Dバックスが中地区王者ブリュワーズを粉砕

写真:Dバックスの守護神ポール・シーウォルドは勝利を喜ぶ

今回対戦したダイヤモンドバックスとブリュワーズ両者が兼ね備えていたものがある。それは守備と強力な先発投手だ。また一方で、勝者にあり、敗者になかったものもある。それは長打力だ。

トラッキングデータから算出した守備貢献OAAでブリュワーズは1位、Dバックスは2位。MLB屈指の守備自慢対決を決定づけたのは、目の覚めるような好守ではなく、勝負どころの一発長打だった。

前日のブルペン対決はDバックスが制し、王手をかけた状態で迎えた第二戦。Dバックスは今季17勝を誇る大黒柱ザック・ギャレンが満を持しての登場となった。一方後がないブリュワーズの先発はフレディ・ペラルタ。知名度は高くないが、対戦打者に占める三振の割合は30.6%でナショナルリーグの規定投球回到達者中3位。リーグ屈指の奪三振マシーンだ。

この試合も先手を取ったのはブリュワーズだった。初回、制球が定まらないギャレンを攻め立て一死満塁のチャンスを作ると、5番のサル・フリーリックがライトへ犠牲フライを打ち上げ1点先制。さらに続くウィリー・アダメスのタイムリーヒットで2点目を挙げた。

初回、3番のカルロス・サンタナが9球粘った末に四球を選ばせるなど、ブリュワーズ打線がギャレンに投げさせたのは32球。今季のギャレンが1イニングに30球以上要したのは初めてのことだった。なかなか打ち取れない中ギャレンが苛立ちを隠せない状態になっていたのは、まさにブリュワーズの術中に嵌っていたといえるだろう。

ギャレンがなかなか波に乗り切れないのを尻目にペラルタは絶好調。4回まで四球を除いて一人のランナーも出さず5奪三振の投球で、ミルウォーキーの観客は大盛り上がり。難敵を倒し、第三戦に持ち込まれるか―。そう誰もが思い始めた5回表だった。

ペラルタが簡単にアウト2つを取って、対する打者は7番のアレク・トーマス。2ボールからやや高めに入ったチェンジアップをトーマスがやや泳ぎながら拾い上げると、打球は意外にのびてライトスタンド最前列へ。Dバックスのチーム初安打は追撃のソロホームランとなった。

そしてこのホームランを境に、試合の趨勢は大きくDバックスに傾いた。

4回まで毎回のように出塁を許していたギャレンは5回裏、ブリュワーズ上位打線を三者凡退に抑える。すると続く6回表には先頭のヘラルド・ペルドモが四球で出塁し、続くコービン・キャロルが一塁線を破る二塁打。あっという間に無死二、三塁のチャンスを作ると、ケーテル・マーティはフルカウントからのストレートをセンター前へ鋭く弾き返した。

二塁ランナーのキャロルは俊足を飛ばして悠々ホームインし、あっという間に逆転。つい10分前まで1安打投球を続けていたペラルタを一瞬でマウンドから引きずり降ろした。

こうなるともうDバックスに傾いた流れは止まらない。二番手のアブナー・ウリベも自らの暴投もあって2点を失い、この回一挙4点。このシリーズの行方を決定づけるイニングとなった。

しかしブリュワーズもこのまま引き下がる訳にはいかない。8回裏にはDバックス3番手のケビン・ギンケルを攻め一死満塁、9回裏にもクリスチャン・イェリッチがこの日チーム初の長打となるツーベースヒットを放ち、二死ながら2、3塁のチャンスを作る。

それでもあと一歩、ホームベースが遠かった。

最後はウィリアム・コントレラスが三振に倒れ万事休す。捕手のホセ・ヘレーラがマウンドに駆け寄り、守護神のポール・シーウォルドと抱き合った。Dバックスは2017年以来のディビジョンシリーズ進出となった。

勝ったDバックスが光ったのはやはり2試合で4本塁打を放った長打力だっただろう。両軍ともに堅守と好投手を揃え、なかなか打球がヒットにならない中、決め手となったのは一振りで試合を決める長打だった。

長打の本数はDバックスが2試合で6本(15安打中)だったのに対し、ブリュワーズはわずかに3本(21安打中)。安打数で見ればブリュワーズが上回ったが、データに裏打ちされたシフトと高い守備力、好調なDバックス投手陣の前に得点を重ねることはできなかった。

また、Dバックス救援陣のがんばりも忘れてはいけない。2日間で9 2/3イニング、ほぼ1試合を投げぬいた救援陣は9安打3四球を許しながらも粘りに粘り、無失点リレー。シーズン中には苦しむ場面も多く、チーム最大の課題と見られたDバックス救援陣だが、このシリーズ勝利の立役者は間違いなく彼らと言っていいだろう。

一方敗れたブリュワーズは今季というだけでなく、1つの大きな節目を迎えることになる。すでに長年にわたってチームの舵を取ってきた球団本部長のデビッド・スターンズは退任が確定。さらに監督のクレイグ・カウンセルも今季限りでFAとなる。首脳陣が大きく入れ替わり、来年以降はチームが大きく変わることになるかもしれない。

勝ち上がったDバックスは日本時間10月8日にドジャースとの地区シリーズを戦う。

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