兵庫の県立病院、77医師が年960時間超える残業 過労死ラインに相当、働き方改革へ県がPT設置

医師の働き方を考えるプロジェクトチームについて、定例会見で発表する斎藤元彦知事=兵庫県庁

 兵庫県は5日、県立病院の医師約1500人について、2022年度の時間外労働の状況を調べたところ、残業時間が過労死ラインに相当する年960時間(月平均80時間)を超えた医師が77人(5.1%)に上ったと明らかにした。来年4月には医師の残業規制が始まり、原則、年960時間が上限となる。県病院局は同日、長時間勤務の解消策や労務管理の在り方を検討するプロジェクトチーム(PT)を設置した。

 県立病院を巡っては、5病院(尼崎総合医療センター、西宮病院、加古川医療センター、淡路医療センター、災害医療センター)が医師に労使協定の上限を超えて残業をさせたとして、18年度以降に労働基準監督署から是正勧告を受けたことも、神戸新聞社の情報公開請求で分かっている。

 県によると、残業時間が年960時間を超えた医師がいたのは、尼崎総合医療センター(37人)▽はりま姫路総合医療センター(29人)▽西宮病院(5人)▽淡路医療センター(4人)▽丹波医療センター(2人)-の5病院。最長は1481時間だった。

 尼崎、はりま姫路には救命救急センターがあり、残業が増えたとみられる。診療科としては他に、長時間の手術もある整形外科や脳神経外科、麻酔科、産婦人科などで目立った。

 PTは担当幹部らで構成し、長時間勤務の背景を詳しく分析。カルテの入力や薬剤指導など医師以外の職種に移せる業務、デジタルトランスフォーメーション(DX)による業務効率化を検討する。一部の県立病院では、既に人工知能(AI)を活用した問診や画像診断を試行している。

 また、日勤の他に当直や診療応援なども担う医師の勤務形態は複雑で、学会発表の準備や症例報告のデータ整理といった「自己研さん」が業務に当たるかどうかも不明確な部分が残る。こうした現状を踏まえ、PTでは適切な労務管理の在り方も探る。

 一方、厚生労働省の研究班が22年に実施した調査によると、病院勤務医の約2割が年960時間超の残業をしていると推計された。会見した斎藤元彦知事は、医師確保の観点からも働き方改革を進める考えを示し「県立病院での成果を、県内の私立病院や公的病院にも広げていきたい」と話した。

 今後、地域医療に詳しい医師らにもPTに加わってもらい、来年2月をめどに結果を取りまとめる。(田中陽一)

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