〔海外〕2023年9月の災害を振り返る

2023年9月に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。

※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。

●9月
【自然災害】モロッコでM6.8の地震 2900人以上が死亡
[被害]死者2900人以上 負傷者6000人以上
2023年9月8日23:11頃(日本時間9日07:11頃)、北アフリカのモロッコ中部を震源とするM6.8の地震が発生した。この地震で簡素な造りの住宅が多数倒壊し、中部アルハウズ県を中心に2900人以上が死亡、6000人以上が負傷した。また、山間部の広範囲で大きな被害が出ており、全壊または部分損壊した住宅は少なくとも5万戸にのぼり(モロッコ王室発表)、30万人以上が地震の影響を受けたとされている(国連発表)。避難した住民らは空き地でのテント生活を余儀なくされたほか、観光地として人気の都市マラケシュでは世界遺産に指定されている旧市街の歴史的建造物やモスク(礼拝所)などが損壊した。
モロッコはアフリカプレートとユーラシアプレートの境界周辺に位置し、大規模な地震がたびたび発生している。1960年には南西部のアガディール沿岸を震源とするM5.8の地震が発生し、1万人以上が死亡した。

【自然災害】リビアで大洪水 死者・行方不明者2万人以上
[被害]死者1万1300人以上 行方不明者1万100人以上
2023年9月11日、北アフリカ・リビア東部で大洪水が発生した。9月上旬にギリシャで発生した「地中海ハリケーン」と呼ばれる台風のような低気圧が、10日にリビア北東部に暴風雨をもたらした。わずか24時間で年間降水量を上回るような記録的な大雨に見舞われたことで、乾燥地帯で普段は水の流れのない「ワジ」と呼ばれる涸れ川を濁流が流れ下った。特にデルナでは、川の上流にあるダム2基が決壊し、市街地に大量の水が一気に押し寄せたことで、甚大な被害が生じた。
国連人道問題調整事務所(OCHA)の報告によると、9月16日時点で、最も被害の大きい都市デルナで、少なくとも死者が1万1300人、行方不明者が1万100人にのぼり、デルナ郊外でも170人が死亡した。被害の全容はいまだ見えておらず、捜索作業が進むにつれて死者数はさらに増えると予想される。
現在、リビアは国家分裂状態にあり、統一政府の欠如がダムのインフラ整備の遅れを招き、被害拡大につながったとの指摘もでている。現地では捜索・救助活動が続いているが、依然として多くの遺体が水中やがれきの下などに残ったままで、水の汚染や感染症といった衛生環境の悪化も懸念されている。

【安全保障】アゼルバイジャンがアルメニアとの係争地ナゴルノ・カラバフで軍事活動
[被害]死者200人以上 負傷者400人以上
2023年9月19日、アゼルバイジャンは隣国アルメニアとの係争地となっているナゴルノ・カラバフ地域に対し、「対テロ作戦」と称した軍事活動を開始した。活動開始の翌日午後には、ロシアが提案した停戦案をアルメニア系勢力が受け入れ、アゼルバイジャンは軍事活動を停止した。今回の軍事活動で200人以上が死亡し、400人以上が負傷した。軍事活動停止後は、停戦案に基づきアルメニア系勢力の武装解除が行われ、実質的な統治機関であった「アルツァフ共和国」についても2024年1月1日に解体することが決定した。
こうした一連の動きに対し、およそ12万人が居住するとされるアルメニア系住民は迫害や民族浄化を恐れ、アルメニアへと避難を開始。ナゴルノ・カラバフ地域からアルメニアへ通じる道は渋滞した。また、25日には燃料貯蔵施設が爆発する事故が発生し、避難のために車へ給油をしようとしていた多くの住民が巻き込まれ、170人以上が死亡した。このような混乱もありながら、10月上旬までにナゴルノ・カラバフに住むアルメニア系住民のうち、9割近い10万人以上がアルメニア国内へ避難した。
こうした多くの避難民が発生している事態に対し、アルメニアはアゼルバイジャンを「民族浄化」をしていると批判。これに対してアゼルバイジャン側はアルメニア系住民の強制的な退去はおこなっておらず、権利を保障するとした。また、アルメニアのパシニャン首相は平和維持軍を駐留させていたロシアについても、今回の軍事活動へ介入しなかったことから、旧ソ連系の国からなる集団安全保障条約機構(CSTO)の機能不全を指摘し、対ロシア政策を大幅に転換する考えを示した。これに対しロシアは、アルメニアに接近するアメリカの動きに警戒しつつ、今回のパシニャン首相の発言はロシアとアルメニアの関係を絶とうとしているものだと反論した。
ナゴルノ・カラバフ地域はアゼルバイジャン西部に位置し、歴史的経緯からアルメニア系住民が多くを占める。過去には1990年代と2020年の2度、大規模な軍事衝突が発生していた。また、2020年の軍事衝突ではアゼルバイジャンが大半の地域を占領下におき、ロシアの平和維持軍2000人が同地域に駐留していた。

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