ハルキストに今年も吉報届かず…「来年こそは」 神戸の料理店、村上春樹さん母校でため息

村上春樹さんの受賞はならなかったが、来年に向けて乾杯するファンたち=5日夜、神戸市中央区中山手通2(撮影・長嶺麻子)

 5日夜に発表されたノーベル文学賞。期待された作家、村上春樹さんの受賞はならなかったが、神戸にある村上さんゆかりの店には熱心なファン「ハルキスト」らが集まり、落胆しながらも「来年こそは」と杯を交わした。

 村上作品にも登場する老舗イタリア料理店「ピノッキオ」(神戸市中央区)。夕方からオーナーの山中崇裕さん(68)や常連客らが垂れ幕を用意し、15人のファンがその時を待った。中継サイトから「ノルウェー」の単語が聞こえると、空気が一瞬張り詰めたが、受賞を逃したことが分かると一転、ため息に。

 エジプト出身でカイロ大大学院生アラア・シャルカーウィーさん(27)は、9年前の来日を機に、村上作品に引き込まれたといい、この日が初来店。店内の雰囲気に「村上さんの世界観を感じる」と笑顔を浮かべ、「来年も来ます。ハルキストたちと過ごせてうれしかった」と話していた。

 「今年は取ると思ったんやけどなあ」と山中さん。「村上さんのおかげで今年もファンのみなさんと顔を合わすことができた。その喜びをまずは分かち合いたい」と語り、「来年こそ祝いの垂れ幕を降ろして、いいお酒が飲みたいですね」と期待をかけた。(鈴木雅之)

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 ジュンク堂書店三宮店(神戸市中央区)は文学賞発表を前に、期待される村上春樹さん、小川洋子さん、多和田葉子さんの作品を「新刊話題書コーナー」に集めていた。

 重元利隆副店長(54)は「本や作家が話題になるだけでありがたい。賞に関わらず、この機会に手に取ったり読み返したりしてほしい。受賞という楽しみは来年以降に持ち越しです」と話した。

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 村上春樹さんの母校・神戸高校(神戸市灘区)。同校同窓会の尾野俊二会長は「たいへん残念」と落胆。ただ「作品の素晴らしさがそれによって左右されるものではない」と力を込め、引き続き「応援していく」とした。

 西田利也校長は「村上さんの存在は、生徒たちの誇りであり希望です」と強調し「私たちはこれからも、村上春樹ワールドとの新たな出会いを心待ちにしています」と新作への期待を込めた。

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