“1日に3色以上”で相乗効果が——野菜の抗酸化力が脳にもたらすメリット

色が濃く鮮やかな野菜のフィトケミカルが強い抗酸化力を発揮(写真:アフロ)

「野菜には代謝を助けるビタミンやミネラル、腸内環境を整える食物繊維、そのほかさまざまな成分が発見されており、私たちの健康を守ってくれる“薬膳”のような働きもしてくれるありがたい食材です」

こう話すのは医学博士で『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)の著書がある岩崎真宏先生だ。

「野菜は体によい」という考えを持ってはいるものの、その価値の大きさを十分に認識している人は多くない、と岩崎先生は話す。

「野菜に含まれるさまざまな栄養素のなかでも、フィトケミカルといわれる色素や香りの元となる化学物質は抗酸化作用が強く、細胞や血管の修復や若返りなどに働きます。健康でいるためには、野菜をしっかり取ることが不可欠です」

フィトケミカルのなかでよく知られているのがポリフェノールやカロテノイドなどの成分だろう。ぶどうの赤い色素やにんじんのオレンジ色などがこれに該当する。

「野菜の栄養素がもたらす作用は色によって異なります。最低でも1日に3色以上の野菜を食べるようにすると、野菜からの栄養成分を複合的に取れるだけでなく、相乗効果も期待できるのです」(岩崎先生、以下同)

特に、色が濃く鮮やかな野菜のフィトケミカルは強い抗酸化力を発揮するという。

「これらは認知症やがんの予防・回復に作用するものも多いことが世界中のさまざまな研究で明らかになっています」

2060年には日本国内で高齢者の3人に1人がアルツハイマー型認知症にかかるとされており、がんは日本人の死亡原因の第1位。こうした大病を防ぐのに効果的とあっては、野菜のもつパワーをきちんと把握しておきたいところ。

そこで、岩崎先生に認知症とがんの予防に効果的な野菜を教えてもらった。

「アルツハイマー型認知症は、認知機能をつかさどる大脳皮質と、記憶をつかさどる海馬の脳神経細胞内に『アミロイドβ』と呼ばれるタンパク質が蓄積し、脳神経細胞を死滅させることで発症します。アミロイドβの発生・蓄積を抑えるために、野菜の抗酸化作用が有効です」

認知症予防でもっとも注目すべき野菜はごぼうだ。

「’15年に日本薬学会で発表された論文に、ごぼうに含まれるフィトケミカルのアルクチゲニンが脳神経細胞の死滅を約40%抑制したという研究結果があります。食物繊維が豊富で“第二の脳”ともいわれる腸の環境も整えてくれます。アルクチゲニンはごぼうの皮の近くに多く含まれているので、皮部分も食べるようにしましょう」

赤しそ、ビーツ、ケール、紫にんじんに含まれるフィトケミカルにも、脳神経細胞の修復や脳の血管の働きをサポートするなどの働きが認められている。

「赤しそは青しそよりも多くのロスマリン酸を含んでおり、強い抗菌作用があることも特徴的です。また、紫にんじんにはアントシアニンが豊富。アントシアニンはなすにも含まれていますが、なすは皮の部分に限定されているのに対し、紫にんじんは芯まで紫色でアントシアニンの宝庫といえる野菜の1つです」

がん予防に有効な野菜のうち、最注目はブロッコリースプラウト。

「スルフォラファンというフィトケミカルが細胞の修復を繰り返し、酸化ストレスを除去する働きをして、がん細胞を抑制することが明らかになっています。ブロッコリースプラウトはキャベツなどと同じアブラナ科の野菜ですが、アブラナ科の野菜はがん予防に有効で、1日に100g食べることでがんの発症率が19%下がるという研究データも出ています」

もちろん、野菜だけ食べていればよいというわけではない。

「偏った栄養の取り方では本末転倒で、タンパク質や炭水化物なども摂取しつつ、全体のバランスを心掛けて食べることが大切です」

1日3色以上の野菜をしっかり食べて、健康寿命を延ばそう。

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