イタリアン反社にナメられた殺人マシンが最後のハードコア風紀活動!『イコライザー THE FINAL』で心の故郷にアモーレとグラッチェを倍返し

『イコライザー THE FINAL』

ロバート・マッコールが帰ってきた!

皆さん、ついに「ナメてた相手が、実は殺人マシンでした!」ムービー界稀代のハードコア風紀委員ロバート・マッコールさんが帰ってきました!

しかも、今年は『イコライザー THE FINAL』、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』という2014年にシリーズ1作目が公開された二大「ナメてた相手が~」ムービーの最新作を拝むことができる贅沢な年になりました。

そもそもシリーズ第1作『イコライザー』(2014年)は、テレビドラマ『ザ・シークレット・ハンター(原題:THE EQUALIZER)』(1985~1988年)のリメイク映画として企画された……というメイキングについて、そしてマッコールさんが身の周りにある日用品を武器にするDIY殺法誕生の経緯など、必ず試験に出る情報については以前BANGER!!!さんに原稿をみっちり書かせてもらったので、興味のある方は読んでみてください!

今度はイタリアに出張イコライザー

というわけで、シリーズ3作目となる『イコライザー THE FINAL』。監督は『トレーニング・デイ』(2001年)ではじめてデンゼル・ワシントンと組んで以来、ワシントン主演の『イコライザー』(2014年)、『マグニフィセント・セブン』(2016年)、『イコライザー2』(2018年)を監督してきたアントワーン・フークア。彼がワシントンと組んだ映画は、今回で5作目になる。

気になる物語ですが、前作『イコライザー2』で映画開始早々、マッコールさんがイスタンブールに出張イコライザーをしたように、本作の冒頭でもイタリア・シチリア島に出張して、極悪反社相手にひと暴れ……という言葉では足りませんでした。大量殺人大会を披露。しかも素手のマッコールさんが銃器で武装した4人の反社をわずか9秒で皆殺し、という残虐かつ鮮やかな神業も披露。

マッコールさん、おかえりなさい! オープニングから最高すぎます。このシーン、本当に素晴らしいので鑑賞される方は絶対に瞬きしないでください!

しかし、その処刑祭りの最中にマッコールさんともあろう者が、うっかり深手を負ってしまう。大量の血を流しながらも殺人現場から脱出する彼は、シチリア島からはフェリーで出ることができたものの意識を失ってしまい……。

こんな感じでいきなりハートを力強く掴んでくれるオープニングなんですが、個人的に嬉しかったのは前作では髪を伸ばしていたマッコールさんが、初心にかえって1作目と同じスキンヘッドにしてくれたこと。ツルツル頭で表情を1ミリも変えずに正義の大量殺戮を繰り広げるマッコールさんは、気が狂うほどカッコ良いです!

グラッチェ精神とアモーレあふれる町で心癒されるマッコール

――マッコールさんが意識を戻すと、ふかふかのベッドの上にいた。南イタリアの田舎町を逃走中に意識を失っていた彼を発見した警官が、地元で小さな病院を開業する懐が深い老人エンツォ(レモ・ジローネ)のところに連れて来たのだ。

深手を負った理由を聞かないエンツォのもとで静養するマッコールさん。当初はすぐにでも田舎町から去るつもりのマッコールさんだったが療養生活中、リハビリがてら散歩しているうちに、『魔女の宅急便』(1989年)やディズニー&ピクサー映画『あの夏のルカ』(2021年)の舞台を思わせる平和でのどかな町のムード、そして陽気かつグラッチェグラッチェ精神あふれる地元民たちとの交流によって、妻と死別してから長い間忘れていた心の平穏を感じるようになる。

『イコライザー』シリーズといえば毎回、舞台となる町やそこで暮らす人々の描写が一見さらっとしているんですが、非常にきめ細かく魅力的に描かれているんですよね。今回もフークア監督の町を描くスキルはスパークしています。

しかし……平和かつアモーレ満載と思われていた田舎町は、実は超武闘派イタリアン反社の縄張りだった。彼らは田舎町を一大リゾートに大改造するべく、住人たちを追い出そうと圧力をかけていた。

これが最後のハードコア風紀活動

フークア監督といえば、ワシントンとの初タッグ作『トレーニング・デイ』でワシントンが演じた悪徳刑事や、『イコライザー』シリーズに登場してきた悪役を見ればわかるように、同情の余地が1ミクロンもない、血も涙もない悪役を描くスキルに長けた御方。本作のイタリアン反社たちも、スクリーンに向かって「あなた方の血は何色なんですか!?」とシャウトしたくなるほどの悪行をコンマ1秒もためらうことなくやり尽くす。

しかも、彼らは地元警察の上層部とも癒着しているから質が悪いことこの上ない。でも、まあ、『イコライザー』シリーズ的には、悪役が調子にのればのるほど死亡フラグが留まることを知らない状態になっちゃうんですが……。

そういうことなので、田舎町の生活に慣れ、地元民とも仲良くなったマッコールさんの目にイタリアン反社たちの悪事がちょいちょい入るようになる。そして、例の感情がウズウズしだす。この町をイコライズ(均衡に)するため処刑すべきか、と……。

さあ、かくして皆さんが期待に胸をぱんぱんにして待ち焦がれていたロバート・マッコールさん最後のハードコア風紀活動が幕を開けます!

敵から“豪快にナメられる”ことでシリーズのフレッシュさをキープ

「ナメてた相手が~」ムービーといえば、近年は『イコライザー』以外にも『96時間』(2008年)、『ジョン・ウィック』(2014年)などがシリーズ化された。しかし、『イコライザー』以外の作品は、2作目以降は「ナメてた相手が~」風味が薄くなる傾向がある(それはそれで面白いが)。

だが、『イコライザー』シリーズは毎回、マッコールさんを新たな土地で生活させることで「ナメてた相手が~」ムービーの面白さ&鮮度をキープ・オン。しかも本作の舞台は南イタリアの田舎町という、マッコールさんにとっては縁もゆかりもない土地。さらに悪役は、これまでの元スペツナズやCIA工作員というその筋の仕事をしてきた者ではなく、町の反社。当然、これまで以上に悪役たちはマッコールさんのことを「ただのハゲてるジジイ」と豪快にナメてくれます。

また、前作『イコライザー2』では「悪に成り下がった元同僚たちに殺された親友の復讐」を主軸にしつつ、マッコールさんのイコライザーぶりをたくさん堪能したい観客のために、「別れた妻から娘を誘拐したDV夫を制裁」、「女性を泥酔させて強姦するエリート・サラリーマンたちを制裁」、「近所の不良少年を更生させる」、「第二次大戦中の混乱で、生き別れた姉弟を再会させる」等の細かいエピソードを散りばめていた。

そんな前作とは違い本作は、ひとつの舞台(南イタリアの田舎町)に腰を据えて<マッコールさんVS超武闘派イタリアン反社>をじっくり描く。それでいて、ファンサービスと思われた冒頭の“シチリア島の極悪反社を皆殺し”も本筋に繋がっていく、という粋な作りになっている。

そして、当初は無関係だと思われていた事件のピースをはめていく役目を担うのが、今回初登場のCIA捜査官エマ・コリンズ(ダコタ・ファニング)。10歳の時に『マイ・ボディガード』(2004年)でワシントンと共演したダコタ・ファニングが19年ぶりにワシントンと再会し、有能なCIA捜査官を演じてくれるので楽しみにしていてください!

丁寧かつ真心を込めた人体破壊描写でR指定に

『イコライザー』シリーズといえば、やはり最も気になるのがマッコールさんのハードコア風紀活動ぶり。前作では限度を超えた体罰で済んだ悪党もいたが、今回は違う。悪いことをした人は必ず殺される。

マッコールさんが身の周りのアイテムを武器にする、DIY殺法。今回その武術指導をする役割を担う第二班監督を務めたのは、リャン・ヤン。『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018年)でトム・クルーズ&ヘンリー・カヴィルを相手にトイレで限度を超えた喧嘩を繰り広げたスーツ姿の東洋人を演じた、あのヤバい人です。彼によると『イコライザー THE FINAL』では、マッコールの戦闘スタイルは以前よりもさらに進化したという。

『イコライザー2』での悪者への仕打ちが彼を変えました。だからアントワーン・フークア監督は、マッコールのスタイルが、より残忍で、より直接的で、無駄な動きが少なくなるように望んでいました。一発で相手を倒せるのなら、無駄に二発は使わないということです。

というわけで、本作のマッコールさんが繰り出す正義の暴力は残酷度が格段にアップ! 前作は、(マッコールさんがペドロ・パスカルの眼窩に親指を突っ込むような描写があったのにも関わらず)PG12だった。本作では前作をはるかに上回る正義の暴力行為――「悪党の顔面に銃口を突き刺す」、「悪党の腕を折ると、肉から骨が飛び出す」、「悪党の後頭部にナイフを突き刺す」「表情を1ミリも変えずに悪党の生首切断」などなど、これまで以上に丁寧かつ真心を込めた人体破壊描写をアピールした結果、見事R指定となった。

「悪いことをすると、こんな酷い目に遭う」というメッセージが詰まった教育映画

マッコールさんの戦闘シーンの描き方も前作までとは大きく違う。1作目は、初登場でミステリアスな存在だったマッコールさんの素材の味を活かしつつも、ヒロイック成分多めな戦闘シーンに。2作目の戦闘シーンはさらにヒロイック成分を増量して、マッコールさん側から描いていた。いっぽう、本作の戦闘シーンは大幅に路線変更し、基本的に悪役側の視点から描いている。つまり、被害者側から描かれるので、悪役が本性を現したマッコールさんに対して感じる恐怖度が、シリーズ中で最も濃厚になっている。

僕は「ナメてた相手が~」ムービーのことを常々、「主人公の殺人マシンぶりがあまりに常軌を逸しているので、観ているうちにだんだん悪役が可哀想に思えてくるジャンル」と言っている。そういう意味で本作は、「ナメてた相手が~」ムービー史上最も悪役が可哀想に思えてくる映画にも仕上がっている。それでいて、「悪いことをすると、こんな酷い目に遭う」というメッセージが詰まった教育映画的な仕上がりになっていると思います。たぶん。

しかも、本作にはマッコールさんが過去のイコライザー活動を回想するシーンがあり、マッコールさんの主観映像で描かれるのだが、ナタ、ワインボトル、包丁、銃を駆使して次々と大量虐殺を繰り広げる様子は、『ノーカントリー』(2007年)の殺し屋アントン・シガーと『13日の金曜日』シリーズのジェイソンが合体した超大量殺人鬼の主観映像を観ているようで、素晴らしいことこのうえない!

要するに本作は、マッコールさんがイタリアを舞台に残虐かつトレビアンな過去イチのジャスティス・バイオレンスをスパークさせる映画! そんなわけで是非、スクリーンでマッコールさんの最後の戦いを観戦してください!

文:ギンティ小林

『イコライザー THE FINAL』は2023年10月6日(金)より全国公開

『イコライザー』『イコライザー2』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「イコライザー イッキ観!」で2023年10月放送

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