常陽の安全対策「適切」 茨城県原子力安全対策委 事故対応は次回審議

高速実験炉「常陽」の安全対策について審議した県原子力安全対策委員会=水戸市大工町

日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の運転再開に向けた安全対策の一部の妥当性について、県原子力安全対策委員会は5日、「おおむね適切な対応」と評価した。原子力機構側は原子炉出力や制御棒の設計変更、ケーブルの難燃化などを説明。事故発生時の対応策については次回審議する。

対策委は同県水戸市内で開かれた。原子力機構側は原子炉を正確に停止できるよう、制御棒を従来の6本から、4本とバックアップ用の2本に変更するとともに、原子炉の出力を10万キロワットに引き下げると説明。原子炉停止盤を中央制御室の外に設置するほか、火災対策としてケーブルの難燃化を示した。

地震対策としては、地盤改良工事や冷却材のナトリウム配管の耐震性を強化するほか、竜巻対策として、飛来物から原子炉建屋を守るため、外壁や天井に繊維シートを設置する。

会合終了後、東大大学院教授の古田一雄委員長は、安全対策について「新規制基準にのっとり着実に対応している。ナトリウムを使う特殊性を踏まえ、審議を進めていきたい」と話し、次回会合で審議を終了する方針を示した。

常陽は7月、原子力規制委員会の新規制基準の適合審査に合格した。一方、運転再開に必要な安全対策工事の着工には、原子力安全協定に基づき、県と大洗町の「事前了解」が必要となる。県は専門家で構成する対策委の見解を、事前了解の判断指針の一つとしており、その評価が注目されている。

常陽は国内唯一の高速炉で、発電設備はない。廃炉になった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の前段階に位置付けられる研究施設。1977年に運転を開始したが、実験装置のトラブルで2007年から運転を停止している。

安全対策工事の事前了解を巡っては、県は原子力安全対策委員会と、原子力関係市町村の首長や県議、有識者でつくる「県原子力審議会」の2機関で独自に安全性を審議し、隣接市町村の意見を聴いた上で、判断する方針を示している。

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