プレミアム商品券、上限120万円分 兵庫・西宮 販売初日は1時間で完売 旅行やリフォーム…意外に多い高額需要

プレミアム付き商品券の発売開始前から長い列をつくる人たち=西宮市南越木岩町

 兵庫県西宮市の苦楽園、夙川、甲陽園地域で使えるプレミアム付き商品券が、飛ぶように売れている。千円券12枚入りのつづり1冊を1万円で販売し、総額1億2千万円分となる1万冊を発行。驚くべきは購入上限で、1人100冊120万円分まで買えるという。いやいや、いくらお得でもそんなに買って使い切れるん?と思いながら発売初日をのぞいてみると…。(吉田敦史)

 販売は9月30日と10月1、7、8、29日の5日間、いずれも午前9時から但馬銀行苦楽園支店(同市南越木岩町)で予定されている。

 初日の様子を取材するため午前8時半に同支店を訪ねると、駐車場には既に50人ほどが列をなしていた。前の歩道には約30人、さらに路地を折れた先に30人以上の列が延び、15分前倒しで販売が始まった。

 待っていた人たちは自分の番が来ると希望の冊数をスタッフに伝える。目立つのは数冊や10冊、20冊を買い求める人たち。7人で態勢を組んだスタッフたちが、差し出された1万円札を手際よく数え、つづりの束と交換していった。

 「こちらの方、60冊です!」。受け渡し役のスタッフが、別のスタッフを呼んだ。50冊以上を希望した人は、支店内のATM前に案内されるのだ。防犯上、多額の現金は受け取ってすぐに入金するためだという。こちらにも列ができた。

 その後も次々と売れていき、この日予定されていた2千冊は、開始から1時間足らずで完売した。

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 「予想をはるかに超える需要でした。実は売れ残ったらどうしようと思っていたんですが」と打ち明けるのは、同市最大級の商店会「苦楽園ストアーズミーティング」の副会長で、今回の企画を担当した長田悟さん(43)。同商店会は昨年と一昨年、いずれも4日間で5千冊6千万円分を完売し、まだ需要があると見込んでいた。

 ただ、プレミアムとなる20%の上乗せ分は県と市の補助でまかなっており、支給は1団体につき1200万円までと決められている。そのうち200万円は商品券発行やチラシ作成の経費で、単体の商店会ではプレミアム分は1千万円が限界となる。

 そこで同商店会は、買い物エリアが近接する甲陽園商店会に声をかけ、共同で商品券を発行しようと提案。2団体で2400万円の補助を受けられることになり、1万冊1億2千万円分の販売が可能になった。

 さらに、1人あたりの購入上限を昨年までの5冊から、一気に100冊に引き上げた。少額だとスーパーや日用品店、飲食店での利用に偏りがちだったが、旅行代理店や住宅リフォーム、美容整形、宝石加工、写真館など、高額の支払いにも需要があると考えたからだ。

 狙いは的中した。初日に64冊を買った女性(36)は神戸市垂水区在住ながら、苦楽園の業者に自宅のリフォーム工事を依頼しているといい、64冊はその代金分だという。「業者さんから商品券のことを教えてもらいました。物価が上がっているので助かります」と、うれしそう。

 妻と2人で計150冊を買った男性(68)=西宮市=は米国への旅行代金に充てるといい「円安のこの時期。ちょっとでも安く旅行できれば、さらに楽しめる」と顔をほころばせる。

 昨年4冊買ったという友人に誘われて初めて1冊買った同市松生町の主婦(72)は「使い切れなかったら困ると思って1冊にしたけれど、スーパーですぐに消費できそう。もっと買った方がいいかしら」と悩んでいた。

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 苦楽園ストアーズミーティングと甲陽園商店会による商品券は約150店舗(5日現在)で年内いっぱい使える。

 西宮市商工課によると、ほかに市内八つのエリアで独自にプレミアム付き商品券を販売している(一部は終了)。総額では、四つの商店街振興組合からなる「JR甲子園口ほんわか商店街」が2億1千万円分で最高。また、500円で1枚配布されるポイントシールを10枚集めて千円分の金券として使えるなどのポイントセールを実施している商店街もある。

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