インボイス制度 長崎県内の登録数は3万件 小規模の免税事業者は取引縮小も

インボイス発行の登録申請書。e-Taxでも登録できる=長崎市松が枝町、長崎税務署

 消費税のインボイス(適格請求書)制度が今月始まった。長崎県内事業所の登録件数は約3万1千件(8月末現在、個人含む)。納税を免除されているフリーランス(個人事業主)や小規模事業者の中には、税負担を回避するため登録を見送ったことで、取引縮小につながるケースも出始めている。
 登録件数は九州で福岡(約14万1千件)、熊本(約4万7千件)、鹿児島(約4万2千件)に次ぎ4番目に多い。福岡国税局は「登録は任意。定着に向けて制度の周知と相談を実施し、事業者に寄り添って丁寧に対応する」としている。
 インボイスは、消費税が2019年に10%へ引き上げられた際、食料品などに8%の軽減税率が適用されたことに対応した請求書類。正確な納税額を計算するために導入した。下請けや商品納入などを受注した事業者が発注元の事業者に対し発行する。税務署に申請書を提出すると、登録番号が通知される。
 「小規模の免税事業者が最も大きな影響を受ける」。長崎市内の税理士は現状をこう解説する。
 フリーランスや売上高1千万円以下などの免税事業者は、登録すれば課税事業者となり、税負担が生じる。一方、発注元はこれまで「仕入税額控除」の仕組みに基づき、下請けや商品の仕入れ先に支払った消費税分の金額を差し引いて納税できたが、10月からはインボイスがなければ控除できなくなった。こうしたことから税理士は「取引先から『登録しなければ、取引しない』と言われる恐れもある」と指摘する。
 建設業の清光(同市)は、大手企業との取引を継続するため、課税事業者に転換した。小川清貴社長(36)は「相手先の登録番号を確認するなど事務処理が大変になりそう」と苦笑いする。
 同市内のフリーランスの男性エンジニア(22)は「事務手続きや納税の負担がかかる」ことを理由に登録しなかった。最近は発注元から「番号を取得しているか」と聞かれる機会が増えたと実感しており、「消費税分値下げした額を提示する取引先もあり、収入が下がった」と声を落とした。

 インボイスの登録は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)で自宅からもできる。県内8税務署で説明会や相談会を随時開催中。日程や会場は国税庁ホームページに掲載している。

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