<レスリング>【2023年アジア大会・特集】出場選手の声(第2日)

 

(2023年10月5日、中国・杭州 / 取材=布施鋼治、撮影=保高幸子)


 ■女子50㎏級優勝・吉元玲美那(KeePer技研=北朝鮮の選手と決勝を争い、薄氷の勝利)「決勝は相手の選手が第1ピリオドからばてていることを感じていました。今夏、自分は体力トレーニングをメインに頑張ってきたので、その効果は感じられました。技術面に関しては、今年6月に須﨑選手に負けたときと同じ課題が今回の決勝でもそのまま出てしまった感がある。同じような形で最後はもつれてしまったので、たまたま今回は自分が勝てたけど、自分が攻撃に入ってからの処理は克服できていない。もっとしっかりと練習していかないといけないと感じました。

 アジア大会は初めての出場だったけど、気負うことなく挑戦する気持ちを持って挑みました。決勝の相手は組み合わせから北朝鮮か中国と予想していました。北朝鮮の選手と対戦するのは初めてだったけど、別に驚きはなかったです。自分の方が体力があることが分かって自信になりました。相手はもつれたときの処理が上手でした」


 ■女子53㎏級優勝・藤波朱理(日体大=決勝で地元中国のパン・キアンを10-0で破って優勝)「世界選手権で優勝してうれしかったけど、この大会のことがあったので、心から喜べなかった。優勝することができて、まずはうれしい気持ちです。パン選手は私が小さいときからビデオ越しに見ていた選手で、その頃から世界で活躍していた。闘ってみたい選手の一人だった。今まで試合をしたことはなかったけど、話をして人柄のいい方でした。ただ、闘うからには勝つ、という思いでした。

 (世界選手権から2週間という短いインターバルでの出場だったことについて)世界選手権の後はおいしいものとかいっぱい食べたかったけど、がまんして『アジア大会で優勝してから食べる』と心に決めていました。私にとっては初めての総合大会出場だったけど、大会の雰囲気とか歓迎の仕方とかがすごかった。『オリンピックはこれ以上にすごいのかな』と想像したらワクワクしてしまいました。この大会で優勝できたことは、パリ・オリンピックに向けてのいいステップになったと思います。

 3年後には名古屋でアジア大会があります。そのときには、今回、中国の選手たちに大声援が飛んだように、日本代表として大声援が飛ぶ中で試合をしてみたい」


 ■女子57kg級優勝・櫻井つぐみ(育英大=決勝は北朝鮮の選手に残り時間1分10秒まで0-6と劣勢。最後は7-6で逆転優勝)「北朝鮮の選手とは初めて対戦したけど、第1ピリオドは本当にフォールされそうで危なかった。でも、自分には体力があるし、気持ちでも負けないと思っていたので、ハーフタイムのときには気持ちを切り換えることに集中していました。それで最後に勝つことができました。(最後の状況について)相手が逃げていて、場外に自分から(2度)出た形になったので、コーションを2回もらうことができて勝つことができました。最後の1分くらいは相手もきつそうで、最初の強さもなくなっていたので、『もう行くしかない』と思って気持ちでなんとか勝ち切った感じです。

 今回は世界選手権と日程も近くて厳しかったけど、総合競技大会は経験したことがなかったので、そういう大会も経験したいと思って出場しました。今まで闘ったことのない国の選手と闘ったり、交流できたという意味では、いい大会だったかなと思います」


 ■男子グレコローマン97kg級・鶴田峻大(自衛隊=敗者復活戦を勝ち上がり、3位決定戦で韓国選手を4-3で破って銅メダルを獲得)「(第2ピリオド終盤に頭突きを受けた)鼻は大丈夫です。レスリングは胸と胸を合わせる競技。頭から突っ込んでいったりする行為は反則で、2失点になります。今回も反則となり、それで3-3になりました。最後の1点は相手が『頭突きではない』とチャレンジしたけど、認められなくて1点となりました。

 リードされているときには、元横綱・白鵬さんの講演で聞いた話を思い出しました。運という漢字の由来は『軍が走る』。走らないと、運は巡ってこない。行動に移さないと、運は巡ってこない。すごくいい言葉だと思いました。自分はすごい取り柄のあるような選手ではないけど、白鵬さんがおっしゃっていた言葉を心に入れて試合に臨んだ結果、最後、自分に運が巡ってきたのかな、と思いました。6分間ずっと相手を押し切っていたことに対する運が巡ってきたのだと思います」


 ■男子グレコローマン130㎏級・奥村総太(自衛隊=初戦でウズベキスタンの選手に0-5で敗れ、敗者復活戦に回れず)「コンディション的には悪くなかったけど、グラウンドの部分で切れのある動きを出せなかった。最初に自分からアタックできなかった。気持ちの面で負けていた部分もある。すぐ次の大会(10月下旬にアルバニアで開催のU23世界選手権)がある。攻める意識を持って、グラウンドでも先に攻めていきたい」

© 公益財団法人日本レスリング協会