「濁手」白磁、鮮やか色絵 茨城・水戸、10日まで 十五代柿右衛門展

薔薇文の花瓶(手前左)をはじめ、鮮やかな色絵の作品が並ぶ十五代酒井田柿右衛門さんの展覧会=水戸市泉町の京成百貨店

有田焼の陶芸家、十五代酒井田柿右衛門さん(55)=佐賀県有田町=の展覧会が5日、茨城県水戸市泉町1丁目の京成百貨店で始まった。柿右衛門さんの作品は「濁手(にごして)」と呼ばれる乳白色の磁肌に、赤や緑、青などの鮮やかな草花色絵を施す伝統の様式で知られている。今回はバラやヒマワリなどをモチーフにした文様を新たに加え、花瓶や皿など約60点を展示している。同店主催。10日まで。

「濁手」という言葉は、コメのとぎ汁を「にごし」と呼ぶ佐賀地方の方言に由来する。コメのとぎ汁のように温かみのある白色の磁器は、有田町の泉山陶石などを使用した原料を配合し、独自に製造される。一般的な白磁がやや青みを帯びるのに対し、濁手の素地の柔らかな乳白色は華やかな色絵と絶妙の調和を生み出すという。

柿右衛門さんは父親の十四代柿右衛門さんに師事し、2014年に十五代を襲名した。17世紀の柿右衛門様式磁器を手本としながらも、新たな意匠や色彩を模索し続けている。「自然体で描くことを心がけている。色彩については素地の白に対して、強烈な色絵にせず、優しい絵作りを大切にしている」(柿右衛門さん)と話す。

今展は初出品の「薔薇文」「向日葵文」をはじめ、独自デザインの「団栗文」などの作品を一堂にそろえ、会場内を優雅な雰囲気に包んでいる。

夫と訪れた市内に住む60代の女性は「白地に浮かぶ草花の色絵が日本の四季を表現していてすてき」と話した。

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