山北の「お峰入り」 ユネスコ登録後、初の大舞台 8日に記念公演

男性6人が息を合わせ、1.3メートルの棒を振るう「棒踊り」。本番前の最後のリハーサルで地元住民らに披露した=山北町生涯学習センター(9月23日撮影)

 山北町共和地区で約700年間続いてきたとされ、昨年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産に登録された「お峰入り」が8日、同町内で6年ぶりに記念公演される。人口約160人の地区で子々孫々と口承で受け継がれてきた伝統も人口減で岐路に立ち、存続に向けて「オール山北」を掲げて新たな道を模索する。登録後初となる大舞台に伝統の担い手たちは「形は変えても先祖から伝わる心は変えない」と練習に汗を流す。

 記念公演を直前に控えた3日夜、2011年に閉校した旧共和小学校のグラウンドに「棒踊り」のメンバーが練習に集まった。演者6人が息を合わせて棒を振って踊る。4演目をこなす祭りの花形で練習は今年6月から始まり、夏場はほぼ毎日のように研さんを重ねた。

 集落ごとに先祖代々、担う演目が決められ、棒踊りは山奥の深沢集落の役目。しかし、実際には補欠要員を含めた演者7人のうち6人が移住者で、深沢生まれの演者はいない。

 今回初めて参加する池谷賢さん(43)は12年前に子育てのため茨城県から山北に移住。雄大な自然に魅了され「外から来た人間だから山北の良さを感じ、もっと山北を知りたいと思った」と演者に立候補した。都内から移り住んだ服部靖晟さん(24)も「お祭りなので楽しみながらいい演技ができれば」と意気込み、移住組が伝統の柱を支えている。

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