今回のテーマは、“海外市場”を目指す道内企業。国内市場の先細りという危機感から、独自の技術やサービスを押し出し海外進出を図る。

【小樽の企業　“防雪柵”で国内シェア6割】

小樽の「理研興業」。道路の脇に設置する防雪柵を製造・販売する会社だ。防雪柵は主に北海道と東北の各地で活用。売り上げの約8割を占め、国内シェアは6割以上だという。柴尾副社長は「上の屈曲している部分が特徴」と話す。

横から吹き付ける風と雪を柵で受け止める際、柵に穴を開けておくと、そこから落ちる雪は柵の上を流れる風の勢いで巻き上げられる。この原理を活用すると、道路上にも柵にも雪が積もることがないという。

「高速道路や国道など幅員の広いところでは絶大な効果がある」と話す柴尾副社長。いま考えているのが、海外市場への挑戦だ。現在キルギス共和国に防雪柵を約6.5キロ納入し、来年施工が完了予定。積雪の多い地域で需要が高まると見込む。さらにもうひとつ、海外市場で広げようとしているのが…

LEDの光でドライバーに進行方向を伝える「ワイヤロープ視線誘導」という製品。夜間や吹雪の際でも、安全に道路を走行させるため、ガードケーブルに独自技術でLEDを取り付ける。この製品は現在ネパールで夜間の輸送を支えるインフラとして活躍しているほか、キルギスやカザフスタンでの実用化も目指している。

風変わりな製品も開発中。袋状のマットの中に入っているのはなんと、大量の「犬の毛」だ。

犬の臭いが野生のシカを追い払う効果があることに着目。侵入防止柵に貼ると、シカが道路へ近寄らないようにすることができるという。柴尾副社長は、アイデアを駆使して新たな製品を生み出し、市場を開拓し続けることが目標と話す。

【“オイルフリー”で海外へ　北海道米菓フーズ】

2011年に創業した旭川の「北海道米菓フーズ」。道産のもち米=米菓を原料としたお菓子を製造・販売する会社だ。現在、道内で流通しているおかきの7割はこちらの商品だという。

作っている商品の6～7割は他社ブランドの製品。創業以来事業は順調に推移してきたが、人口減で国内市場の縮小が避けられないことから、2018年に海外市場の開拓に踏み出した。その取り組みの中で大きなネックとなったのが、賞味期限の問題だ。

広島社長は悩んだ。「通常の米菓は(賞味期限が)4カ月。海外で売る期間が1カ月しかなくなってしまうから、最低でも半年の賞味期限がほしい」。なんとか賞味期限を延ばそうと、江別の研究機関の力を借り、新たな製法の開発に取り組みたどり着いたのが、この無色透明な液体だ。

広島社長「これが特許を取った液体。これを噴霧していく」。おかきの賞味期限が短くなるのは、油が酸化してしまうため。そこで、油を使わないノンフライの焼きおかきに米由来の液体を塗って味付けすれば、長い間おいしく食べられると考えた。

この製法によって、120日だった賞味期限は2倍の240日に。海外に出しても十分な期間販売できる商品づくりが可能になった。

特許は去年12月に取得。コロナの影響が薄れ海外での健康志向も高まってきていることから本格的な市場開拓へと打って出たところだ。広島社長は「アメリカの日本系のスーパーからの引き合いが多くなってきている」と話す。

創業124年、小樽の「田中酒造」。一般的な酒造りは冬に仕込み作業をするが、田中酒造は寒冷な北海道の気候を生かし1年を通じて仕込みを行う、全国的に珍しい酒蔵だ。

田中酒造はインバウンドにも人気で、年間約20万人の観光客が訪れ試飲や買い物を楽しんだ。しかし、新型コロナウイルスの影響で海外の客が途絶えたことなどから、年間10億円規模だった売り上げは3割も減少。インバウンドに再び訪れてもらうために取り組んだのが「日本酒の熟成」だ。

2020年から3年の月日を経て完成した熟成酒。仕込みには水ではなく酒を使い、よりまろやかな味を生み出した。

「世界各国でどちらかというと出来立てではなく、時を経て価値が上がるのがお酒。客からも『ビンテージの熟成したものはないのか』という声もあった。ワールドスタンダードな熟成酒を、という思いからスタートした」と語る岡田専務。今年6月から販売を始めた熟成酒の感想を海外観光客に聞くと…

カナダ人男性は「普通の日本酒よりいい味」と話すほか、韓国人男性は「のどごしが良い」と好評価。販売開始からの売れ行きは予想を上回ったとのこと。

年間の生産量は現在5千本ほどだが、これを10年以内に2倍に増やしたいという。岡田専務は「フルーティーな新酒と熟成酒をどちらも味わってもらいたい」と話す。

コロナが落ち着いたことで増えてきたインバウンド需要を取り込もうとする動きも、さらに活発化していきそうだ。
（2023年10月7日放送　テレビ北海道「けいナビ～応援！どさんこ経済～」より）