国際クルーズ船客どこ行くん? 神戸素通り? 京都? 大阪? 姫路城? 意外に人気「港町らしさ」の神戸・元町

市民に歓迎の旗を振られながら入港する豪華客船=神戸港

 新型コロナウイルス禍で中断していた国際クルーズ船の受け入れが約3年ぶりに再開され、半年がたった。神戸港では3~10月、予定を含め外国船の寄港が48回あり、年間ではコロナ禍前の2019年の計65回に迫る勢いだ。経済効果が見込まれる一方、神戸で観光をせず京都や大阪に繰り出す乗客も多いとされる。客たちはどこで何を楽しむのか。船を下りた行き先を追った。(末吉佳希)

 

■関西一円へバス

 7月下旬。明け方の神戸港に巨大クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」(約11万6千トン、定員約2700人)が神戸港に着岸した。

 1時間後、入国審査を終えたアジア系や欧米系の乗客が軽装で神戸ポートターミナル(神戸市中央区)に降り立つ。客たちが吸い込まれていったのは、駐車場で待つ11台のツアーバスだった。乗車口には「奈良」や「大阪」「京都祇園祭」などの目的地が掲げられていた。

 寄港に合わせて関西一円の観光を楽しめる複数ルートのバスツアーが組まれており、兵庫県内観光はそのうち3台のみ。目的地はいずれも「姫路城」だった。

 京都へのツアーバスに乗り込もうとしていた米国人男性(70)は言った。「日本文化といえば、やっぱり京都かなって。クールなお寺を一目見たくてね」

 

■「港町らしさ」

 ただ、乗客の全員がツアーバスに乗り込むわけではない。各ツアーバスが出発した後の午前8時半ごろ、船内で朝食を済ませた船客たちがそぞろにターミナル前に集まり、シャトルバスの列に並んだ。行き先は「元町」だ。

 「最近は、フリーで元町近辺を散策する動きが多い印象」。神戸観光局客船プロモーション課の松岡慎治課長がこの半年間で感じた船乗客の変化を語った。

 ターミナルではクルーズ船の寄港時に、大丸神戸店前(同市中央区)を往復する臨時のシャトルバスが運行する。10~30分おきに出発する乗り場には、待機の列が続くという。

 寄港の再開後、最も利用が多かったのは、8月に寄港した「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」(約17万トン、定員約4200人)の時で、往路だけで1日約1700人が乗車した。乗船者の4割以上が元町を周遊した計算になる。

 市港湾局の担当者によると、開発が進む三宮に比べて、文化色の濃い元町を好む訪日客も多いという。

 4回目の日本旅行で初めて神戸を訪れたというオーストラリア人のキーラン・モスさん(78)は神戸元町商店街入り口のアーケードにカメラを向け、「フォトジェニックなところがグッド」と満足げだった。

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