茨城県内大雨被害 平日ボランティア課題 県 休暇制度、企業に期待

台風13号に伴う大雨で民家周辺に流れ込んだ泥を取り除くボランティア=9月26日、日立市内

台風13号に伴う茨城県内の大雨被害は8日で1カ月を迎える。県内外から早期復旧に向けて多くの支援の手が差し伸べられた一方、平日のボランティア確保の難しさが浮き彫りとなった。市民の要請に派遣が追い付かず、復旧作業に影響も見られた。高齢者世帯が増える中、災害時に欠かせない存在となっており、県はボランティア休暇制度の導入を企業に呼びかけるなど環境づくりを進める。

■1週間後で3割

「隣県の福島や千葉でも災害が起きたことや、発災後に平日が続いた影響が大きかった」

今回の大雨被害で当初、ボランティアが不足した要因について、県福祉政策課の担当者が分析した。

大雨は金曜日の9月8日に降り始め、県北地域を中心に浸水被害が発生。高萩と北茨城両市は翌9日、日立では11日に社会福祉協議会が災害ボランティアセンターを設置し、週明けから支援活動が始まった。

被害発生から1週間経過した15日時点で、3市でのボランティアの活動人数は延べ1361人。6月の水害で取手市に集まった人数と、同じ1週間後で比べた場合、数だけ見れば千人以上多いが、3市にまたがる被害規模に見合った人数は確保できていなかった。

1週間後の時点で日立市では要請104件に対し、対応完了が31件(30%)、高萩市は112件に対し、37件(33%)、北茨城市は94件に対し、32件(34%)と、いずれも3割程度にとどまった。

その後の3連休では延べ2400人のボランティアが活動し、ほぼ全ての要請に派遣できたという。

■導入は1割未満

同課の担当者は「平日でも活動しやすい環境の整備が鍵」と指摘する。

2020年12月施行の県災害ボランティア活動促進条例では、事業者は従業員が活動しやすい職場環境を整備するよう努め、県は普及啓発を行うことを定めている。

同課は企業に対し、社会貢献活動を理由に有給で休みを取得できるボランティア休暇制度の導入などを働きかけていくことを検討している。

厚生労働省の22年度実施の意識調査(2601社対象)によると、制度を導入済みの企業は6.5%で、「導入予定」「導入を検討している」を合わせても2割ほどにとどまる。未導入の理由(複数回答可)としては「人材に余裕がない」(25.2%)、「会社としてサポートする必要性を感じない」(19.9%)といった回答も目立った。

■軽作業も周知へ

県災害ボランティア登録制度では、県内で大規模災害が発生した際、登録者にボランティア活動の情報を配信している。制度は21年9月に始まり、今年9月末時点の登録は、個人681人と29団体にとどまる。県は企業を含む団体の登録者を拡大させたい考え。

ボランティア活動に参加する人の性別や年代を広げる方策も検討している。家具や畳の搬出、泥かきといった体力が必要な作業だけでなく、屋内の掃除など比較的、力を必要としない作業も求められる実態を周知していく。

同課の担当者は「被災者に早く元の暮らしに戻ってもらうためにも、ボランティアの確保は重要。しっかりと対策を講じたい」としている。

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