<レスリング>【2023年アジア大会・特集】出場選手の声(第3日)

 

(2023年10月6日、中国・杭州 / 取材=布施鋼治、撮影=保高幸子)


 ■男子フリースタイル57㎏級優勝・長谷川敏裕(三恵海運=決勝で北朝鮮の選手を7-3で破り、金メダルを獲得)「もっと自分から攻めたら楽しい試合になったのかな、と思います。思っていた以上に北朝鮮の選手は強かったというか、思った以上に攻められなかった。情報が全然なく、反対ブロックから誰が上がってくるのか全く予想はつかなかった。5年くらい前に北朝鮮の選手と闘ったことがある。無名の選手だったけど、負けている。そのときと同じようなミスはしないように心がけていました。

実際に闘ってみて、見た目以上に力のある強い選手でした。第2ピリオドは目まぐるしく点数が変わって、(具体的に何がポイントになったかは)自分でもよく分からない。『負けていたら、もっと攻めよう』くらいしか考えていませんでした。今回の優勝は所属、コーチ、仲間、家族の応援やサポートがあって実現できたものだと思っています。周りの方々に本当に感謝しています」


 ■女子62㎏級2位・尾﨑野乃香(慶大=決勝で北朝鮮の選手に6-0から逆転負け)「闘った感じでは、絶対に自分の方が強いと思いました。でも(4点を取られた)一発の投げ(飛行機投げ)は、試合で初めてやられてしまった。もう何年もシニアのレベルでメダルを取ってきて、そういう技で負けてしまうのは、本当に嫌なことだし、悔しい。でも、これも自分の責任です。

北朝鮮の選手とやるのは初めて。過去の試合映像は見てきました。今日は自分の試合に集中していたので、逆マット(別ブロック)の試合はあまり見ていないけれど、どういう選手なのかある程度は分かっていました。相手は右構えということで、自分の片足タックルを炸裂させてやろうと思っていました。でも、向こうに(身体の)柔らかさがあった分、焦りが生まれた面がありました」


 ■女子68㎏級3位・松雪成葉(ジェイテクト=3位決定戦でカンボジアの選手に第1ピリオド開始早々にフォール勝ちして銅メダルを獲得)「自分のレスリングができて、とりあえずメダルを持って帰ることができるのでホッとしています。取るべきところで、しっかり取れたと思います。

(準決勝では中国のゾウ・フェンに負けたけど)メダルがあるのとないのとでは全然違うので、メダルを取ることに集中しました。3位決定戦の相手は、レスリングの世界ではあまり聞いたことがない国の選手だったので、試合前はちょっとドキドキしていました。これからは12月の全日本選手権に向け、全力で頑張ります。(68㎏級はまだオリンピック代表が決まってないので)他の階級からも選手が出てくると思います」


 ■男子フリースタイル65㎏級・山口海輝(日体大助手=3位決定戦でインドのバジラン・プニアを10-0で撃破し、銅メダルを獲得)「優勝するつもりで中国に来たので、その目標を達成できなかったことは悔しい。でも、3位決定戦に回ることができたことはよかった。バジランと闘ったら、自分はどこまでできるのか。そんな気持ちで挑み、勝ててよかった。(初戦で優勝候補のイランのアモウザドハリリに敗れ)すぐに気持ちを切り替えることはできなかったけど、敗復に回って試合をするたびに『自分のレスリングをしよう』と気持ちを吹っ切ることができた。

 今後は、自分のアタックでどんな選手にも入り込める練習をしていきたい。先月、乙黒拓斗選手が世界選手権で負けた。彼を目標にやっていると、世界では勝てない。その上にいるトップを追うようにするようにしたい。振り返ってみれば、『東京オリンピックに出る』という思いは少し弱かったように思う。でも、パリ・オリンピックは何としても自分が出たいという気持ちが強い。何が何でも達成したい」


 ■女子76㎏級・山本和佳(至学館大=準々決勝でインドのキランにポイント負け)「昨日の女子の3階級が全部金メダルだったので、自分も続かないと、と思ったけど、まだアジアで通用するレベルではなかった。過去にも海外の選手とやると力の強さを感じていた。筋トレにも力を入れてきたつもりだったけど、相手の力で自分がビビってしまうところがあった。

76㎏級でやっていくためには、もっと力をつける必要がある。自分はタックルが得意だけど、その前(段階)の崩しが、焦ってくると疎かになってしまう。帰国したら、徹底して練習したいと思います」

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