「巡回連絡」急ピッチ 高齢者方へ1日2000軒ペース 茨城県警 自宅の把握やマンション訪問に課題

取手署の巡回連絡で、高齢者世帯を訪れた署員=取手市小文間

犯罪被害を未然に食い止めようと、茨城県内の高齢者全53万世帯に警察官が訪れる「巡回連絡」が急ピッチで進んでいる。これまでに全体の約18%に当たる約9万6千世帯を訪問し、10月は1日当たり2千軒に巡回ペースを上げた。県警は来年5月までの全世帯訪問を目指しているが、高齢者宅の把握やセキュリティーレベルの高いマンションへの訪問など課題も残る。

巡回連絡は今年6月にスタート。1年間で65歳以上が暮らす全世帯を対象に県内27署員が訪れ、ニセ電話詐欺を防ぐ留守番電話設定をはじめ、住宅侵入盗対策、災害時の早期避難などを呼びかけている。

県警によると、開始直後の6月は巡回軒数が1日当たり411軒にとどまったものの、9月は同約1300軒と3倍に増加。今月はさらにペースを上げており、今後は1日当たり1800軒のペースで全世帯を一巡できる見通し。

巡回連絡では、息子などをかたる「オレオレ詐欺」の被害に遭うきっかけの多くが固定電話への連絡だったことから、被害防止のため約4万世帯の固定電話を留守番電話に設定した。

巡回連絡を円滑に進めるため、県内27署の態勢も変化。中でも、取手署では、巡回連絡を担う地域課の業務を見直し。巡回連絡の進捗(しんちょく)状況に応じて、交通課や刑事課へ業務分担する仕組みに変更した。このほか、隣接する交番同士を巡回連絡の専従班と事件対応班に分ける「ブロック運用」に乗り出した署もある。

今後について、県警地域課は「署員が認知していない高齢者宅をいかに把握していくか」と課題を挙げる。

巡回連絡は交番や駐在所の業務に含まれているが、地域によって実績に差があるのが実情。今回の巡回は過去の記録に基づいて実施しているため、巡回実績の少ない地域では、高齢者が暮らす住宅を周囲に教わりながら進めるケースも。半面、都市部では防犯目的で高いセキュリティー設備があるマンションに入りにくかったり、近所付き合いの少ない住宅街で高齢者がどこに住んでいるか分からなくなったりすることも想定されるという。

このため、同課は「マンション管理人や地域住民に協力してもらいながら実施率を上げていきたい」としている。

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