県立医大、VRで臨床実習 人体構造を立体的な感覚で学べ理解度向上、和歌山

和歌山県立医科大学が医学教育に導入したVR教材(和歌山市で)

 和歌山県立医科大学は本年度から、医学部学生の臨床実習にVR(仮想現実)を導入している。人体の構造などを立体的な感覚で学べる仕組みで、全国初の取り組みではないかという。学生の理解度を調べたところ、大幅に向上しており、大学はこれを活用した特色ある医学教育で、優秀な医師を育成したいとしている。

 医学部学生は5、6年次に、指導医らとともに病院で患者に対応する「臨床実習」に参加する。ただ、県立医大では、新型コロナウイルスの感染拡大時に、医療現場での実施が難しい状況が発生。さまざまな方法を試行錯誤する中、VRの有効性に着目し、専用ソフトを用いて「教育研究開発センター」を中心に教材を作成した。通常の臨床実習の補助的な教材としての位置付けで、一部は薬学部でも利用している。

 VR教材は2種類。人体構造を立体的に理解する「3D―CT VR」は、指導医らと同じ仮想空間に入り、実際の患者の臓器を立体的に見ながら指導を受けることができる。臓器の角度や大きさを変えたり自由な断面を見たりすることなどが可能。血管内に入り込んで内部を進むこともできる。

 また、医療現場を疑似体験する「現場体験VR」は、実際の現場を360度カメラで撮影した動画を使用。自分が治療室内にいる感覚で学べ、一部を拡大したり、浮き上がる説明文を読んだりできる。学生からは「一時停止や見直しが可能で理解が深まる」「現場で見学するより近くで指導医らの治療を見ることができる」「説明文があるので注意点が分かる」などと好評という。

 教育研究開発センターの村田顕也教授は「コロナをきっかけにVR教育を始めたが、さまざまな可能性があることが分かってきた。医科系総合大学として、他の学部にも広げていきたい」。VR教材を授業に活用している内科学第4講座の田中篤教授は「CT画像やエックス線画像は2D(平面)であることから、立体感覚は患者対応を多く経験しないと養われなかった。VR教材を使えば、学生の技術習得が非常に早いと実感している」と話した。

 今後は、研修医や看護師など医療スタッフ向けの教材の開発を目指す。さらに専門医向けの新たな診断法や治療法の開発にも貢献できるとしている。

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