【MLB】最強の矛か、最強の盾か?ブレーブス対フィリーズ ディビジョンシリーズプレビュー

写真:フィリーズはワイルドカードから駆け上がった昨年の再現なるか

同地区のライバル同士にして、共に最強の武器を持つ強豪。2年連続のナリーグ東地区対決となった今季のディビジョンシリーズは、ある種の「矛盾対決」である。

この「矛盾」対決、「矛」にあたるのはもちろんご存知ブレーブスだ。

今季MLB史上最多タイとなる307本塁打を放った打線の迫力は圧巻。1番から5番までは全員30本塁打以上、8番のエディ・ロサリオですら21本塁打を放っているというのだから恐ろしい。

ラインナップには史上初となる40本塁打・70盗塁を達成したロナルド・アクーニャJr.や二冠王のマット・オルソンら強力打者が並ぶ打線は壮観で、今季チームの打者が平均と比較して稼いだ得点貢献(wRAA)はなんと213点。ブレーブス打線は平均的なチームの打線と比較して213点分得点を増やしたことになる。

ちなみに、両リーグが162試合制となった1962年以降で今季のブレーブスより大きなwRAAを記録したチームは歴史上存在しない(2位は2003年レッドソックスの196点)。傑出度という意味で、今季のブレーブス打線はまさに史上最強打線と呼んで差し支えないレベルにある。

一方、「盾」となるのはフィリーズ。意外に思えるかもしれないが、フィリーズは今季MLB30球団の中でダントツの投手力を持ったチームだったのだ。

控えレベルの選手と比較した貢献の大きさを勝利数に換算した指標「WAR」(Fangraphs版)を見ると、今季のフィリーズのWARは24.4。フィリーズ投手陣は全投手が控えレベルのチームと比較して、24勝以上も勝利数を増やしたと考えることができる。2位のレイズは20.6だから、4近い差をつけて1位だ。歴史上稀に見るレベルにあるブレーブス打線ほどの傑出度ではないが、今季のフィリーズ投手陣は他球団に大きく差をつけることができていたといえよう。

ちなみに、今季のフィリーズの防御率は4.02でリーグ13位。それなのにこんな貢献を残したことになるのは不思議だと思う人もいるだろう。

これはフィリーズの本拠地であるシチズンズ・バンク・パークがかなり打者有利な球場であることが影響している。両翼の膨らみがなく一直線で、向かい風が少ない形状をしているため、特に左中間・右中間の打球がほかの球場に比べフェンスオーバーしやすいためだ。

打者有利、投手不利の球場でシーズンの半分近くプレーするフィリーズ投手陣は、その分平均的な球場でプレーする投手よりも見た目の防御率が悪くなりがちになる。その点を補正しているため、防御率がよくなくとも貢献は大きいという結果になっているのだ。

さて、両球団それぞれの強みを理解したところで、それぞれの勝ち筋を考えていこう。

まずはブレーブスだ。

まさに死角なしの野手陣に対して、現在のブレーブスは先発投手人に致命的な弱点を抱えている。

今季ローテを支えたベテランのチャーリー・モートンと左のエースであるマックス・フリードがともに故障者リスト入りしており、ロースターには登録されていない。結果として現在の1番手はスペンサー・ストライダーだが、2番手は今季が実質実働一年目のブライス・エルダー、そして3番手に至ってはまだMLBで6試合しか投げていないAJ・スミス=ショウバーとなってしまう。

ブルペン陣はライセル・イグレシアス、A.J.ミンター、カービー・イェーツら経験豊富なメンバーが揃っているとはいえここまで先発が不安だとリリーフだけでなんとかできる状態ではない。ストライダーはともかく、それ以外の投手が先発する日にはギャンブル要素が入ってきてしまうことは否定できなそうだ。

したがって、ブレーブスとしてはまずストライダーが投げる初戦を取ることが大前提。そして2戦目以降は打線がどれだけ奮起できるかがポイントになるだろう。

一方、フィリーズはどうだろうか。

フィリーズの強みは、(開幕直前に今季絶望が確定したリース・ホスキンスを除けば)全員が故障離脱していない状態でポストシーズンに臨めていることだ。

また、フィリーズのもう一つの強みは(ブレーブスほどではないものの)ある程度の攻撃力を持っていることだ。

少なくとも、MLBでそれほど経験がない投手が不安定な投球をすれば、それを逃さず捉えるだけの力量は十分過ぎるほど持ち合わせている。ストライダーを攻略できなくとも、それ以外の先発投手であれば大量得点の可能性もそう低くはない。

したがって、フィリーズの勝ち上がるためにはブレーブス打線に致命傷を負わされないことが重要になりそうだ。よほどのことがない限りほとんど点が取れないということは考えにくい。それよりも、史上最強打線に押しつぶされて総崩れにならないことを考える必要があるだろう。

日本時間の8日7:07から始まる今季の「頂上対決」。どちらが持ち味を発揮しリーグチャンピオンシリーズに進むのか。注目して見てほしい。

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