勢子の勇姿に盛大な拍手 奈良で「鹿の角きり」始まる

のこぎりで鹿の角を切り落とす神官役(左)ら=7日、奈良市春日野町の春日大社境内の鹿苑角きり場

 古都奈良の秋を彩る伝統行事「鹿の角きり」(奈良の鹿愛護会主催)が7日、奈良市春日野町の春日大社境内にある鹿苑(ろくえん)角きり場で始まった。1日4回実施され、9日まで行われる。

 江戸時代前期の1672(寛文12)年に、発情期(秋〜冬)を迎えた雄鹿の角により人が危害を受けたり、鹿が互いに突き合って死傷することを防ぐために始まったとされる。

 法被姿の勢子(せこ)17人が「赤旗」を持ち、3頭(1回あたり)の雄鹿を角きり場に追い込み、「十字」と呼ばれる捕獲具で角に縄をかけて捕獲。

 鹿をゴザの上に寝かせ、烏帽子(えぼし)をかぶった神官役がのこぎりで角(約60センチ)を切り落とし、神前に供えた。

 観客席からは鹿を追う勢子たちの勇姿に盛大な拍手が送られた。

 奈良の鹿愛護会の職員で勢子のリーダーを務める石川周さん(45)は「300年以上続いてきた伝統行事。奈良の人たちがいかに鹿と共生してきたかを体感してほしい」と話していた。

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