[食の履歴書]勇翔さん(俳優) そば好き「ざる」一択 食文化の違い楽しむ

長野県生まれだからでしょうか、好きな食べ物はそばです。長野県民は、普段からそばをよく食べるんですよ。あまりに当たり前のように食べるので、昔はそばのことを意識したことはありませんでした。

そんな僕がそばについての考えを改めたのは、高校生の時です。そば屋でアルバイトをしたんですけど、その店はまかない料理が毎日そば(笑)。だいたいどこのバイト先でも、まかない料理って飽きるじゃないですか。でもそこのまかないは、飽きずにずっと食べたんです。それで「自分はそばが好きなのかもしれない」と気が付いたわけです。

そばを食べる時、僕はざる一択ですね。山菜を扱っている時期なら山菜の天ぷらも食べますけど、そばは必ずざるです。

山菜の天ぷらも大好きなんです。小学・中学時代は、季節になると母と一緒にタラの芽などを採りに行き、家で天ぷらにして食べました。ですから僕にとっては、山菜もそれほど特別なものではありません。

母は仕事で忙しかったので、普段、料理にかける時間や余裕はあまりなかったと思います。でも山菜採りの後の天ぷらのように、何か一緒にアクティブなことをやった時に食べたものはよく覚えています。家族でイチゴ狩りに行ったことも、とても良い思い出ですね。

母はアーティストのMAXさんが大好きで、ファンクラブの仲間と遊びに出かけていました。僕もよく一緒に連れていってもらいました。ある日、ファンの仲間と遊んだ帰りに食べたおやきのことを、よく覚えています。

おやきって普通、蒸したものですよね。生地は周りにつやがあって、ちょっともちっとしている。でもそこのおやきは灰の中で焼いていて、生地の周りはカリカリに硬かったんです。中は普通のおやきと変わらず、野沢菜があったり、ナスみそがあったりでしたけど、皮の違いにはびっくり。これもおやきなの?という驚きとともに食べたんですが、ものすごくおいしかったです。

名古屋に出て来て「BOYS AND MEN」のメンバーと話していて驚いたことがあります。給食で出てきた揚げパンの色が違うんですよ。うちの小学校で出てきたのは緑色だったんです。でも他のメンバーに聞くと、茶色だというんです。僕の食べていた給食では、揚げパンに緑色のきな粉がかかっていたからなんですけど、これはうちの田舎だけなんでしょうか。みんなと話がかみ合わないんですよ。そういえば名古屋のきな粉は茶色なんです。

土地土地での食の違いというものは面白いですよね。名古屋に出てきた当時は、なるべく名古屋のことを知ろうと思い、名物料理を食べるようにしました。みそカツも手羽先の唐揚げも、すぐに気に入りました。

名古屋には面白い料理を出す「マウンテン」という喫茶店があります。そこの一番の名物は、甘口抹茶小倉スパ。抹茶麺のパスタに小倉がのり、その上に生クリームがのっているんです。どんな料理だと思うでしょうけど、僕は結構好きです。

さすがに住み始めて10年以上もたつと、あえて名古屋名物を食べることもなく、自然に楽しんでいます。

最近は自分でも料理にチャレンジしています。得意なのはドレスドオムライス。卵がスカートのように広がっている形にかかっているオムライスです。あとはカルボナーラ。

実際に料理してみて、卵の扱いの難しさに驚いています。火を通す時間のちょっとした違いで全然変わるるのが、面白い。作る人の腕が試されますよね。最初のうちはボソボソになってしまったんですけど、やっていくうちに成功もするようになって。卵がすごく奥深い食材だということを知りました。 (聞き手・菊地武顕)

ゆうひ 1993年、長野県生まれ。高校時代から、名古屋を拠点に活動をするグループ「BOYS AND MEN」に加入。2010年の旗揚げミュージカル公演「ストレートドライブ!」で、舞台に初出演した。高校卒業後に名古屋に出て、芸能活動の幅を広げる。出演映画「Somedays」が10月13日公開。同作で、マドリード国際映画祭2023主演男優賞にノミネートされた。

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