目が見えなくても、おしゃれしたい ネイルアートで外出楽しく、障害者の要望に応え出張サロン 埼玉の女性が兵庫・西宮の業者と連携

視覚障害者向けの出張ネイルサロンを経営する佐藤優子さん(左)

 透明感のある色に、きらきら光るラインストーンの飾り。華やかなデザインや色使いで手元を美しく見せるネイルアートを、目が不自由な人たちにも楽しんでもらおうという動きが、兵庫などで広がりつつある。きっかけをつくったのは、5年前に視覚障害者向けの出張ネイルサロンを開いた佐藤優子さん(43)=埼玉県上尾市。その経験からは、「目が見えなくてもおしゃれをしたい」という人たちのニーズや、実現を阻む社会の障壁が見えてくる。(勝浦美香)

■「イメージと正反対だった」

 ネイリストの佐藤さんが視覚障害者のニーズに着目したのは、起業前にボランティアで通っていた高齢者施設でのネイルケアの経験からだった。利用者は、視力が落ちていたり、爪が分厚くなっていたりして、思うように爪を切ることができない人ばかり。でも、きれいに仕上がった爪を見ると大喜びしてくれた。

 「目が見えない人たちも同じかもしれない」。そんな漠然とした思いが浮かんだ。当初は「視覚障害への理解が全くない状態で、どうしていいか分からなかった」(佐藤さん)が、日本視覚障害者団体連合が主催するイベントに参加してニーズを探ることにした。

 そこで出会った視覚障害者の女性たちから聞こえてきたのは、「他の人たちと同じように、おしゃれでいたい」という声だった。「見えないので見た目に関することはあまり気にならないのかと思っていたが、イメージと正反対だった」と佐藤さん。手応えを感じ、本格的に事業を展開することにした。

■他人の目を通して

 2018年に開業した出張ネイルサロンでは、利用客との交流を通して、視覚障害者が置かれた状況を理解していった。

 友人の結婚式に招待された女性客は、「結婚式にネイルをして参列する女性が多い」という状況を知っていたが、参列にふさわしく、自分に合うネイルの色やデザインの選び方に悩んでいた。

 「見えない人たちは、いつも他人の目を通して自分の姿を確認している。だから本当は、ネイルサロンや洋服店、美容室などに行って、自分の格好がOKかどうかを教えてほしいという思いがある」と佐藤さんは指摘する。

 ただ、実際にお店に行くと、十分な説明がなされず誤解が生まれたり、差別のような対応をされたりすることもあるという。

 そうした障壁を解消するべく、佐藤さんは19年に一般社団法人「日本視覚障がい者美容協会」を設立。企業、店舗向けのワークショップや、視覚障害者への対応をまとめたハンドブック発行などを手がけてきた。「視覚障害者への理解を深め、誰もが利用しやすいお店を増やしていきたい」と活動を続ける。

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